【苔玉に寄せて】Vol.31〜幼い日々、「苔」との出会い!

幼い日々、「苔」との出会い!

 酷暑と台風が入れ代わり立ち代わり、まことにしのぎ辛い夏の日々です。楽しみな夏休みを如何がお過ごしでしょうか。小学四年生の頃の夏休み、セミやトンボを追いかけ、昆虫採集によく出かけたことが懐かしく思い出されます。昆虫採集の傍ら、鎮守の森で見かける自然の苔の群落に、「わぁー、奇麗だナァ!」と見惚れることが何度かありました。五年生の夏休みになりますと、そろそろ昆虫に飽きて植物に目移りし、中でも「苔」の存在に心奪われていったことを思い出します。

 

 

 詳しくは苔のことはわからないままに、注意深く観察すると、「苔」にもいろいろな種類があることに興味を抱き始めたことでした。そこで、いろいろな種類の苔たちを収集して標本にしてみたい、これを夏休みの自由研究課題にしてみようと思い立ったことでした。以降、家族ともども近辺の山野・夏山・谷筋・渓流などをハイキングがてら連れていってもらい、苔収集したこと、懐かしい思い出です。

 

 

 収集してきた僅かばかりの「苔」の種類を調べようにも、その方法がわからないまま、牧野富太郎先生の植物図鑑を買ってもらい、それを頼りに検索してみたことでした。虫眼鏡の下観察してみると、概ね20余種類の「苔」の収集でした。今思うに、明確に判別できた苔は、僅かにゼニゴケだけだったかもしれません。それでも、4センチメートル程度の枠を作った木箱にガラスの蓋をかけて分類整理し、科名、和名、学名、採集場所、採集日等を記載して、9月第2学期の初日に誇らしげに提出しました。そんな細やかな苔の分類標本が、夏休みの優秀作品として選ばれたこと、懐かしい思い出として残っています。因みに、私は学齢期を長崎県佐世保市に過ごしました。

 そんな小学5年生が大学へ進学して園芸学を学び、思いもよらず「苔玉」を作り、全国いたるところで「苔玉」を語り続けています。小さな、小さな植物、「苔」に触れる度に、幼い頃の感動が鮮やかに蘇ってきます。あの幼い頃の感動を「苔玉」に託して、これからも「苔」に触れていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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