買い物がてら、近所のホームセンターへ出掛けました。園芸生モノ売り場の一角に、4寸鉢に植えられたビカクシダ(コウモリラン)を見かけました。1鉢580円、苔玉に仕立てて、パソコンデスク回りに置きたいナァ、ついつい手が出ました。
自宅に持ち帰って机上に置き、一風変わった緑葉の様相を見る、嬉しくなってきました。60余年以前、大学2年生の頃、下宿部屋の一端にコウモリランを吊り鉢して眺めたことを懐かしく想い出します。「イヤァー、また会えたナァー!」・・・・・
よし、吊り仕立ての苔玉に作ろう・・・・・コウモリランの苔玉造りは先月に書きました。
苔玉に仕立てる植物を探して園芸植物の産地、園芸店、ホームセンター等を歩くのは楽しいことです
『これは、苔玉にピッタリ・・・見―つけた!』ときは、宝物を見つけた感覚です。過去・50余年、苔玉に仕立てる植物材料を探して全国を歩きました。苔玉等、園芸の本質は「園芸生モノ」を知り抜くことにあると思います。園芸生モノを真に理解・熟知するためには、植物それぞれに異なる「産地を歩く」ことも重要です。まずは、近辺にある産地を歩くことによって、研ぎ澄まされた園芸愛好家の目で見ること、さすれば、思いもよらない素晴らしい植物にぶつかることでしょう。
さてコウモリラン君! しばらくの間は私のデスクライフを見ていて下さいねぇ!
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
コウモリラン(ビカクシダ)の苔玉作りにチャレンジしました。
まず、
①.プラスチック製鉢に仕立てられていたコウモリランの根部の土を払い落とす。
②.その根元を水蘚で丸く包む。
③.根元を丸く包んだ水蘚が密着・落ちることのないように、木綿糸でしっかりと巻き止める。
④.水蘚で覆った根部を分厚い山苔で包み、山苔が密着・落ちることのないように、ミシン糸で巻きとめる。
⑤.苔玉仕立てコウモリランの発芽方向、見た目の形状等を見定めながら、吊り金具をセットする。
⑥.プラスチック製鉢に植えられていたコウモリラン、吊り苔玉仕立てに変身です。
立派なコウモリランの吊り苔玉が仕上がりました。太陽光線の十分に差し込まない室内で、大きく羽ばたくコウモリランの葉が垂れ下がることを期待します。
プラスチック製の植木鉢は便利な鑑賞植物の運搬・乗り物です。軽くて割れ難い、大小さまざまな大きさのプラスチック鉢は、園芸の拡大・発展に貢献したこと、大きなものがあります。
でも、植え付けた植物たち(自然)との馴染み・・・・・今一つ、しっくり来ない、どこか違和感を覚えてしまいます。苔で鑑賞対象の植物の根元を覆う・・・・・植木鉢の代替品としての苔・覆い・・・・・今度は『しっくり』です。
『鑑賞植物と苔』とのコラボレーション、更に下草や添景物を添えて、『苔』生す大地に育つ植物たちの景観を描いているようです。園芸の世界に定着してきた『苔玉』です、これからも多種多様な苔玉作成にチャレンジしていきたい・・・・・想い描いています。
プラスチック鉢に押し込められていた『コウモリラン』、吊り苔玉に仕立てられて自然に大きく羽搏いているようです。て、壮大な、素敵な景観を描き・作っていきたいと願っています。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
目に鮮やかな新緑の季節、室内にも観葉植物が欲しくなります。小さな3号鉢に仕立てられたドラセナコンシネ・レインボーを苔玉に作ってみることにしました。ドラセナ・コンシンネは、リュウケツジュ科に分類され、観葉植物として利用されます。赤くて細長くスマートに立ち上がった茎葉の姿は見事、心惹かれます。だが苔玉に仕立てたドラセナ単体の姿を想起すると、少々単純に過ぎるかな・・・・・?
何か緑色の下草的な組み合わせが欲しい!・・・・・と、いうことで、小振りに育てたヘデラ・ヘリックスを組み合わせてみました。赤色と緑色のコントラストで効果覿面、更に、細っそりした赤いドラセナの根元を、緑色のふっくらと丸みを帯びたヘデラの葉が包んで、安定感抜群の苔玉植物群となりました。スマートに伸び上がろうとする単子葉植物・ドラセナの根元を、双子葉植物・ヘデラの丸葉が巧みに包み込んでいる・・・・・自然界のもたらす見事なコラボレーションです。
モミジ、サクラ、ケヤキ等の落葉樹木類の苔玉作りにあたって、下草として玉リュウノヒゲを添植してきました。落葉樹類は晩秋~冬季の間、落葉してしまうため、枝だけを残す寂しい景観となるのは自然の摂理・致し方ありません。ために、常緑草本『玉リュウノヒゲ』をわき付け添植します。
冬季でも緑豊かなクロマツの苔玉作成に当たっても、根元に『玉リュウノヒゲ』等の下草をわき付け添植します。併せて、マツの実である『マツボックリ』をクロマツの根元に配したりして、自然の景観を作ったりしております。
まことに小さくて狭い苔玉の球上です、その苔上に植物たちや添景物を添えて、壮大な、素敵な景観を描き・作っていきたいと願っています。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
さくらの開花前線とともに、春の到来を待ち焦がれる日本列島です。苔玉愛好の私たちにとりましても、3~4月は『桜の苔玉』作りで大忙しでした。『旭山桜』、『御殿場桜』、『富士桜』など、一才桜の品種たちでした。中でも、八重咲種の『旭山桜』が一番人気でした。
多くの人々に知れ渡った桜の代表品種は“染井吉野”という品種です。『パッと開花して、サッと散る』潔さが、明治以降の国策に合致したことから、国花・桜の代表として公園などの公共のオープンスペースに植栽されてきました。
一斉に開花して薄桃色の樹冠をなし、花吹雪となって散りゆく様、水面に散った幾万の花弁は見事な花筏を呈す・・・・・“貴様と俺とは同期の桜”と、歌われた由縁のようです。
戦争が遠い今、森山直太朗は歌ってくれました。
ぼくらはきっと待ってる
君とまた会える日々を
桜並木のみちの上で
手を振り叫ぶよ
さくら さくら 今咲きほこる
刹那に散るゆくさだめと知って
~ 中 略 ~
さくら さくら いざ舞い上がれ
永遠にさんざめく光を浴びて
さらば友よ またこの場所で会おう
さくら舞い散るみちの
さくら舞い散るみちの上で・・・
また、遠い昔の伝承で・・・・・隠岐の島へ流罪となった後醍醐天皇の跡を追いかけて、児島高徳が院の庄(岡山県)で忠節を桜の幹肌に書いたという・・・・・
桜ほろ散る院の庄
遠き昔を偲ぶれば
幹を削りて高徳が
書いた至誠の歌形見
君の御心安かれと
闇に紛れてただ一人
刻む中節筆の跡
永久に輝く花の蔭『天、勾践を空しゅうする莫れ。時に范蠡無きにしも非ず』
そんなこんなを想い描きつつ、桜の苔玉を作ったことでした。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
桜咲く季節、眼前に迫ってきました。何年経っても、桜の苔玉は人気が高い!・・・・・茨城県つくば市、埼玉県久喜市、横浜市などで「桜の苔玉教室」を開催しましたが、いずこでも大変喜ばれております。サクラの品種は、『御殿場桜』『湖上の舞』『旭山桜』などの、一才咲き種類で、下草に2~3芽立ちの『タマリュウノヒゲ』を添えました。
日本に住む私たちにとって、春爛漫の桃色の桜花は他に代えがたく、春を待つ心に思いが重なってきます。コンパクトな桜の苔玉です、ほんの数輪の蕾、開花にすぎません。ほんの数輪に春の息吹を感じ、仄かなピンク色の蕾・開花を愛でる人々の心の繊細さ、優しさに思いを致しております。
私の手元には3年前、2年前に作った『桜の苔玉』が、寒さで硬く窄んだ新芽が少しばかり動き始めたようです。2~3年と経過する中で、樹名札が落ちてしまい、品種名が定かではありません。出雷・開花の動きがみられて来る度に、樹名札を完璧にしておけばよかったと、反省しきりです。『でも、まぁ、桜だし、これでいいや!』と、園芸プロとしての再認識?・・・・・反省、の次第です。
サクラ等の落葉樹木は、晩秋 ~ 冬季の落葉期には、ついつい忘れられて園芸棚の片隅に放置されてしまいがちです。葉が散っても『なお・桜』です。潅水を忘れなければ、翌年にも新芽を吹き出し、仄かなピンクの蕾・花を咲かせ、私たちに春の到来を知らせてくれます。季節の到来を優しく語りかけてくれる桜を忘れないようにしなければ・・・・・!と、思いつつ、ついつい忘れてしまう・・・・・『反省・再認識』です。
『落葉樹』たちの細やかな願いです。
“葉は落ちてもまた必ず『翌年蕾・開花』致します。たかが、小さな、小さな『苔玉・桜』です、されど紛いなき『桜花』です。来年も必ず蕾・開花致します”
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。