【コラム】苔玉に寄せて Vol.110~桜の苔玉(その3 )
桜咲く季節、眼前に迫ってきました。何年経っても、桜の苔玉は人気が高い!・・・・・茨城県つくば市、埼玉県久喜市、横浜市などで「桜の苔玉教室」を開催しましたが、いずこでも大変喜ばれております。サクラの品種は、『御殿場桜』『湖上の舞』『旭山桜』などの、一才咲き種類で、下草に2~3芽立ちの『タマリュウノヒゲ』を添えました。

日本に住む私たちにとって、春爛漫の桃色の桜花は他に代えがたく、春を待つ心に思いが重なってきます。コンパクトな桜の苔玉です、ほんの数輪の蕾、開花にすぎません。ほんの数輪に春の息吹を感じ、仄かなピンク色の蕾・開花を愛でる人々の心の繊細さ、優しさに思いを致しております。

私の手元には3年前、2年前に作った『桜の苔玉』が、寒さで硬く窄んだ新芽が少しばかり動き始めたようです。2~3年と経過する中で、樹名札が落ちてしまい、品種名が定かではありません。出雷・開花の動きがみられて来る度に、樹名札を完璧にしておけばよかったと、反省しきりです。『でも、まぁ、桜だし、これでいいや!』と、園芸プロとしての再認識?・・・・・反省、の次第です。
サクラ等の落葉樹木は、晩秋 ~ 冬季の落葉期には、ついつい忘れられて園芸棚の片隅に放置されてしまいがちです。葉が散っても『なお・桜』です。潅水を忘れなければ、翌年にも新芽を吹き出し、仄かなピンクの蕾・花を咲かせ、私たちに春の到来を知らせてくれます。季節の到来を優しく語りかけてくれる桜を忘れないようにしなければ・・・・・!と、思いつつ、ついつい忘れてしまう・・・・・『反省・再認識』です。
『落葉樹』たちの細やかな願いです。
“葉は落ちてもまた必ず『翌年蕾・開花』致します。たかが、小さな、小さな『苔玉・桜』です、されど紛いなき『桜花』です。来年も必ず蕾・開花致します”

執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。