【苔玉に寄せて】Vol.33〜アイデア次第、活躍する苔玉
アイデア次第、活躍する苔玉
苔玉を室内で鑑賞するには、いろいろな方法がある。最も一般的な方法は、平たい皿状の容器にのせて鑑賞する。でも、写真に示すオリズルランのように枝葉の垂れ下がる植物を鑑賞するには平たい皿にのせたのでは、面白みがない。この場合、ハンギング(吊苔玉)に加工したり、写真のように背丈の高い台の上にのせて鑑賞する。写真は、真鍮製の骨董花瓶の上に皿を載せて、そこから枝葉を垂れ下げて鑑賞している。
次に示す写真は、生花用の水盤を利用して、3個の苔玉を楽しんでいる。水盤の底部分に水分をたっぷり含ませたハイドロカルチャー用のカルチャー・ボールを敷きこみ、その上に苔玉を配置している。この方法だと、一つの容器で数種類の植物を楽しめる。写真ではガジュマルを「主」として、シルクジャスミンを「客」、テーブルヤシを「控」の3種類の植物で、景観を作ってみた。
手元に色々な苔玉を大小様々持って、春夏秋冬、四季折々の変化を、好みに応じて楽しむことができる。春は萌芽・開花、夏は涼しげな緑、秋は果実、冬は枯淡の美と、好みの植物で楽しむことができる。生花四季折々をイメージする、ほんの身近なミニ庭園を思い描く等、自由にレイアウト、楽しむことができる。
写真では水盤底にハイドロ・ボールを敷きこんだが、オーキッド・バークを敷きこんで山林の状況を楽しんだり、また、お正月バージョンとして白川砂を敷き込み、濃緑の苔と白い砂床を楽しむのもいいものである。
夏のバージョンとして、水盤いっぱいに水を張り、水面よりほんの少し高めの輪切り木炭を3個程度水面に立て、その上に苔玉をのせる・・・広い水面に苔玉の島が描ける。水面に浮かぶ大・中・小の緑の島々・・・浅い水底にはメダカ等を泳がせ、更に涼しく、夏を楽しむことができる。
水中に立つ輪切り木炭片は、水の浄化を促し、更に毛管現象で苔玉に適度の水分を補給してくれる。夏の乾燥から、苔玉を守ってくれる、一石二鳥の夏の苔玉鑑賞の方法になる。
数年前のことだが、苔玉を使い、これ等の方法を駆使して、ほんの一坪のミニ庭園を京都市で展示したことがある。デパートの一角での庭のイヴェントに苔玉が異彩を放ってくれた。
小さな皿の上の1個の苔玉に始まって、室内やベランダ園芸等の一つの方法として、また一寸した家庭やオフィスでのイヴェント空間として、苔玉を楽しく発展させて頂ければと思い描いております。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。