【苔玉に寄せて】Vol.47~苔玉からモス・アートの高みへ/発想は素人、実行は玄人

苔玉からモス・アートの高みへ
発想は素人、実行は玄人

  ここ10有余年、苔玉園芸の人気が高まってまいりました。私も多くの店舗や公共施設での苔玉教室やら苔玉ワークショップを、全国各地で開催することが多くなりました。多くの方々が苔玉を通して園芸に興味をもって頂き、嬉しいことです。

  そうした中で、素人と思しき人たちから無理と思われるいろいろな要望が出てきます。「水を遣らなくても枯れない苔玉はないのだろうか」、「指先に乗る程の小さな苔玉を作りたい」、「季節外れの花を咲かせたい」等々と、無理難題を多々提起されます。

  「そんな無茶な!」とぼやきつつも、神様であるお客様の言い分に耳を傾け、解決してきました。素人さんたちの言う無理を、一つ一つ実行・具現化していくのが玄人と呼ばれる由縁なのかもしれません。プロフェッショナルであるという仮面を被って、素人たちの言い分を馬鹿げたことと耳を貸さないのは、玄人の勝手気ままに過ぎないのかもしれません。素人さんたちの仰る無理難題にこそ園芸生活の更なる発展の要素が多く含まれているのかもしれません。

  「発想素人、実行玄人」なんですネェ。多くの人たちの要望に耳を傾け、人々の生活空間にモス・アートとしての苔玉園芸を、更なる高みに位置付けて行きたいと願っております。

  私は大学で園芸学科に在籍し、花卉園芸学教室に学び、少なからず園芸のプロフェッショナルの端くれの一人だと、自負しておりました(大して勉学に勤しんだ訳ではありません)。大学卒業後、園芸に関わる職務に就いて53余年を経過しました。でも、そんなことよりも大事なことは、消費生活者の仰ることに耳を傾け、更なる進化を目指さなければならないと考える此の頃です。

 

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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