【苔玉に寄せて】Vol.72~年末・年始の苔玉

年末・年始の苔玉
 
 年末・クリスマスから新年にかけて300余個の苔玉を作りました。
シクラメン、ミニチュアローズに始まって、松竹梅としてクロマツ、ミリオンバンブー、ウメの苔玉、更に新年の縁起物として、マンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウ、ジュウリョウ、イチリョウの苔玉等々を作りました。
 
 
 赤、白、紫、ピンクのシクラメンの苔玉は、寒い年の瀬・クリスマスの生活空間を暖かく彩ってくれます。花の少ないこの時期に赤、白、ピンク、黄、オレンジ等のミニチュアローズの苔玉は、年末の贈り物等に、若い人たちに人気があります。
 
 クロマツ、ミリオンバンブー(万年竹)、ウメの苔玉は、年始を寿ぐ「松竹梅」として、喜ばれています。松竹梅に彩りを添えるため、赤実のヤブコウジ(十両)や黄花の福寿草を下草として添植したりもしました。
 
 万両、千両、百両、十両、一両は金運をもたらして欲しいという願いを込めています。これらの植物はそれぞれに・・・
マンリョウ(サクラソウ科)、センリョウ(センリョウ科)、ヒャクリョウ(サクラソウ科)、ジュウリョウ(サクラソウ科)、イチリョウ(アカネ科)の植物です。
また、ヒャクリョウは正式の和名「カラタチバナ」、ジュウリョウは「ヤブコオジ」、イチリョウは「アリドオシ」となります。
 

十両(ヤブコオジ)の苔玉

 
 

一両(アリドオシ)の苔玉

 
アリドオシは鋭い棘があることから、「蟻」を突き通すということから、「蟻通し」と名付けられました。「蟻通し」を「有通し」と当て字すると、「万両、千両、百両、十両、有通し」、すなわちお金が「有通し」で、お金に不自由しないという次第です。
 
 この時期、「ミカン」に代表される柑橘類は黄色の果実をたわわに実らせます。小指の先程の小さな黄金の果実を着ける柑橘類に「キンズ(金豆)」と命名して、楽しみます。
 
 
豊かな四季を生きてきた私たちの先人たちは、折々の植物たちを生活の中に上手に取り入れてきました。新年を迎え、四季折々の植物達を苔玉に仕立てて、今年も多くの人たちの眼に触れて頂きたいと思い描いております。

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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