【コラム】苔玉に寄せて Vol.112~『苔 世界』を賑わす草木や添景物
目に鮮やかな新緑の季節、室内にも観葉植物が欲しくなります。小さな3号鉢に仕立てられたドラセナコンシネ・レインボーを苔玉に作ってみることにしました。ドラセナ・コンシンネは、リュウケツジュ科に分類され、観葉植物として利用されます。赤くて細長くスマートに立ち上がった茎葉の姿は見事、心惹かれます。だが苔玉に仕立てたドラセナ単体の姿を想起すると、少々単純に過ぎるかな・・・・・?

何か緑色の下草的な組み合わせが欲しい!・・・・・と、いうことで、小振りに育てたヘデラ・ヘリックスを組み合わせてみました。赤色と緑色のコントラストで効果覿面、更に、細っそりした赤いドラセナの根元を、緑色のふっくらと丸みを帯びたヘデラの葉が包んで、安定感抜群の苔玉植物群となりました。スマートに伸び上がろうとする単子葉植物・ドラセナの根元を、双子葉植物・ヘデラの丸葉が巧みに包み込んでいる・・・・・自然界のもたらす見事なコラボレーションです。

モミジ、サクラ、ケヤキ等の落葉樹木類の苔玉作りにあたって、下草として玉リュウノヒゲを添植してきました。落葉樹類は晩秋~冬季の間、落葉してしまうため、枝だけを残す寂しい景観となるのは自然の摂理・致し方ありません。ために、常緑草本『玉リュウノヒゲ』をわき付け添植します。
冬季でも緑豊かなクロマツの苔玉作成に当たっても、根元に『玉リュウノヒゲ』等の下草をわき付け添植します。併せて、マツの実である『マツボックリ』をクロマツの根元に配したりして、自然の景観を作ったりしております。
まことに小さくて狭い苔玉の球上です、その苔上に植物たちや添景物を添えて、壮大な、素敵な景観を描き・作っていきたいと願っています。

執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。