コラム【 苔玉に寄せて 】Vol.6

喜んでもらえた苔玉
椿の苔玉

椿の苔玉

 苔玉を作り始めて25年余。この間、色々な種類の苔玉を多くの人たちにプレゼントして喜んで頂きました。

 蒸し暑い7月や8月は、アジアンタム、オリヅルラン、ガジュマル、テーブルヤシ、パキラなどの瑞々しい緑濃い観葉植物が、涼をもたらしてくれます。

 9月は、敬老の日のプレゼントとして、苔玉は大変喜ばれます。
御歳98歳を迎えられた私たち夫婦の仲人さんに、さらなる長寿を願って「竹」の苔玉をお贈りしました。寝床に伏しがちの室内生活の中で、すっくと伸びた竹と鮮やかな苔の緑を眼にして、生き生きと輝く老人の姿に触れ、贈った私が元気を頂いたことでした。

 茶人の端くれであった私の母は、初釜ということで1月初旬には多くのお茶仲間を迎えて、茶の湯を楽しんでおりました。毎年同じことの繰り返しで、「何かいいイベントがないかしら?・・」と。ちょうど椿の開花の時期だし、「茶花・椿の開花を苔玉で楽しんでみたら!」と提案、早速に樹高30センチ余の蕾付き椿苗を25種類程集めて苔玉に仕立てました。椿を愛でながらの茶席に皆様大喜び、お帰りには好みの椿の苔玉を土産としました。小さな椿の苔玉たちで華やぎ、茶人の皆様に椿の初釜を楽しんで頂いたこと、いつまでも母の語り草でした。

 2月3日は節分会です。小さな柊の苔玉に鰯の煮干を吊るし、魔除けのお呪い。私たちの生活に密着した伝統の行事の数々、大切に守っていきたいと思います。
2月14日はバレンタインデー。愛しの彼に愛を告白するチャンスです。真っ赤なバラの花言葉は「熱烈な愛」です。この日は、真っ赤なミニチュアローズの苔玉が愛をいっぱいひろげてくれます。お幸せに!

ハナモモの苔玉

ハナモモの苔玉

 私には二人の娘がいます。
3月3日は桃の節句ということで、二人のために「ハナモモ」の苔玉を床の間に飾り付けました。樹高60センチ程度、下草にヤブランをあしらいました。幼い娘たちはさして喜ぶ様子もなく、雛あられやらケーキに夢中、喜んでいたのは妻と私の外野席でした。二人の娘たちとの、懐かしい思い出です。

 5月は「母の日」。最近では感謝の気持ちを込めてアジサイの花を贈ることが多くなりました。山アジサイの可憐な花は苔玉にピッタリ、お母様へ贈って下さい。

 四季折々、私たちの生活と植物との関わりを、身近な苔玉を通して、見つめ直してみたいと思います。

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執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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