コラム【 苔玉に寄せて 】 Vol.8

四季折々の苔玉を楽しむ

下草のある苔玉

 

モミジ、ケヤキ、ウメ、ハナモモなどの落葉樹は晩秋になると落葉してしまい、寂しい苔玉景観になってしまいます。
緑の苔玉の丘に立つ落葉した枝振りを「枯淡の美」として堪能するのも、一つの鑑賞眼だと思います。

下草

一方で、苔の丘に落葉した樹木一本だけ、それでは寂しすぎると感じる方もいらっしゃることでしょう。その場合は、「落葉してしまった木」の根元に一もとの下草類を添植・あしらってみては如何でしょう

冬枯れした落葉樹の傍らに下草として常緑の玉リュウノヒゲやコクリュウなどを添植しておく。そうすれば、寂しさも一味違った風情を醸し出すことでしょう。あるいは、下草としてフクジュソウ、スミレ、ツクシンボ、などの山草を添植して、早春を描くのも一興です。

これらの下草の植え付けは、苔玉制作の当初から寄せ植えして苔玉を作ることが必要です。

また、手っ取り早く少し華やいだ春の演出をご希望でしたら、秋のうちに白、黄、紫色の開花を期待して、クロッカス(秋植え球根)等の小球根をコケの中にねじ込み植えておけば、手軽な春の演出になります。球根植え付けの具体的な方法は、コケの部分に割り箸などで球根をねじ込み植え付けられる程度の植え穴を開けて、その植え穴に球根を植え付けるといいでしょう。

更に深い味わいをお求めでしたら、小さなラン科の植物「トキソウ」を苔の中にねじ込み添植すれば、優雅な春の苔玉景観をお楽しみ頂けることでしょう。

この他に、秋に紫色花を開花するヤブラン、ランナーを伸ばしながら増殖し続けるユキノシタ、ハツユキカズラ、オウゴンカズラ、アイビーなど、好みの草花や山野草を添植して、世界に一つだけしかない、好みの苔玉にチャレンジして下さい。

小さな下草を添えることによって、一味も二味も違った四季折々変化する苔玉園芸をお楽しみ下さい。

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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