コラム【 苔玉に寄せて 】 Vol.9

苔玉の手入れ、アレコレ

苔

苔玉を育てて、「苔が茶色に変色し、枯れてしまった」と、耳にします。「苔玉の管理は難しい」と、仰る方によく出会います。

「苔は多湿を好みます」 これは紛れもない事実で、多くの人の認めるところです。そのために苔玉を水に浸しっ放しにし、室内に閉じ込めて外気に触れることもなく、太陽光線も一切遮断して、完全管理した積り・・・? これでは「苔」は虚弱体質となって、死んでしまいます。

水に浸したままでは、酸素に触れることは出来ずに呼吸困難に陥り、ご臨終です。
苔玉は水にたっぷり浸し、その後水を切って皿の上などでお楽しみ下さい。
皿の上に乗せる時、皿と苔玉部の間に僅か(2~3㍉程度)ばかりの隙間を作り、風通しを図ることが栽培のコツです。

「苔だって葉緑素を持った”緑色の植物”です」 緑色であることで、苔が太陽光線を浴びて炭酸同化作用をし、生命を維持しています。室内に閉じ込めたままでは、苔はモヤシ伸びした虚弱体質となり、遂には死に至ります。さりとて、強烈な太陽光線下では日焼けして、茶褐色になり死んでしまいます。
また、爽やかな外気に触れることがなければ種々の雑菌が繁殖し、苔は病弱な体質となってしまう。弱り目に祟り目、苔は茶色に変色し、枯れてしまいます。

ごくごく月並みな表現をしますと、苔は、空中湿度が高くて水はけのよい朝日程度の差し込む風通しの良い場所を好む、ということです。朝日ではなく夕日が差し込んでは、紫外線が強すぎて困りものです。”夕日”、すなわち”西日(にしび)”のことを、園芸家たちは逆さ読みして”しにび(死日)”と称し、嫌います。更に月並みに言えば、苔玉は、朝日の当たる風通しの良い木漏れ日の下 に置くと良い、ということです。

「それでは鑑賞出来ないじゃないか」と、お叱りを受けることも、しばしばです。 答えは簡単、苔玉を3~4個持って頂き、取っ替え引っ変え、室内で鑑賞して下さい。その際、気がついた折には噴霧器で水を噴霧、空中湿度を高めると、苔は大喜びします。

条件が整えば、苔は順調に伸びます。伸び過ぎると、苔は蒸散作用が激しくなり、更に下部に日が射し込まなくなって、苔は黄変~褐色化し、遂には枯れてしまいます。伸びすぎた苔は、時折軽く鋏を当てて刈り込むことです。芝生の管理と同じです。

最後に、「苔玉の肥料はいつ、ごれくらいあげるの?」という、質問もよくあります。
肥料をあげると苔は全滅…、枯れてしまいます…。 富士山から街中の側溝まで、苔の育つ自然界には肥料気は殆どありません。
そんな中で苔は生きています。

 

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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