コラム【苔玉に寄せて】Vol.12〜「吊苔玉」で室内に彩を
「吊苔玉」で室内に彩を
新年を迎えて5日を経過、お屠蘇気分も抜けてパソコンに向かっている。
パソコンラック上の棚に吊るした苔玉(吊玉)が、心癒してくれる。寒風吹きすさぶ外界とは別世界、暖かい部屋空間に、今日の吊苔玉は「ツルマサキ」と「プレクトランサス」の二連玉、春はまだまだ先だというのにプレクトランサスの新芽が瑞々しい淡緑色に輝いている。
まことに狭い室内空間に小さな、小さな緑の惑星が眼前に漂っているような感覚にとらわれる。
過ぎ去った一年を振り返ると、四季折々の植物を吊苔玉に仕立て、楽しんできました。
年間を通して楽しめたものは、イングリッシュアイビー、オリズルラン、サクララン(ホヤ)、ハートカズラ、ハツユキカズラ、黄金カズラといった品種名を持つ「テイカカズラ」などでした。また、ハッカの香りのするハーブの一種「アロマティカス」も周年楽しむことができました。
6月以降の夏季には、ワイヤープランツ、アスパラガス、ポトス、トラデスカンチャー、フィーカス・プミラ、等多くの種類の観葉植物類を吊苔玉として楽しむことができました。7月から8月に、赤や白、またピンクの大輪花を開花させる「マンデビラ」の吊苔玉の開花は、来宅される多くの方々に楽しんで頂きました。古い時代から日本の夏に風鈴を下げて涼をもたらしてきた「ノキシノブ」は、和の涼感を伝えてくれました。
枝垂れ咲種のシンビジューム等の各種の小型洋ラン類は、元来樹上の寄生植物です。霧吹き等して空中湿度を保つことで、見応えのある吊苔玉を楽しむことができました。赤、黄、白、紫、ピンク等の洋ランの花咲く部屋宇宙空間を、ご想像ください。
晩秋となると、ヘンリーヅタ、シュガーパインなど、それまで旺盛な緑の吊苔玉が紅葉して、枯淡の美をもたらしてくれました。更にツルウメモドキ、コトネアスター、クランベリーなどの、赤や黄色の果実が秋の深まりを教えてくれました。
年末差し迫ってくると、大陸生まれの力強い緑の吊苔玉の中に大実のヤブコウジの真っ赤な果実が輝いています。西洋イワナンテンは、木枯らし吹きすさぶ中で赤く染まった葉を装い、異彩を放っています。
苔玉を吊るすこと(吊玉、連玉)で、四季を問わず狭い空間で緑を楽しんでみては如何でしょう。
「吊苔玉」として楽しめる植物の種類はたくさんあります。
これからももっともっと多くの植物で、私の部屋に壮大な小宇宙空間を作っていきたいと考えています。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
本コラムは、おかげさまで連載1周年をむかえることができました。ご覧くださっている皆様に感謝申し上げます。