【苔玉に寄せて】Vol.17〜「和」も「洋」もいい、苔玉植物

「和」も「洋」もいい、苔玉植物

北海道を除いて列島は梅雨に入りました。庭先のアジサイが今を盛りと、青、紫、ピンクの花を咲かせています。比較的地味な開花のヤマアジサイ、ガクアジサイの苔玉が、今大人気です。一方、湿っぽい空気の中で時折見せる紫外線の強い太陽光線を受け、鮮やかに咲き誇る朱赤色のゼラニウムの開花にも心癒されます。

園芸鑑賞植物は、大まかに「和物」「洋物」と、二大別されることがしばしばです。
ヤマアジサイ、クロマツ、ゴヨウマツ、モミジ等の比較的地味な植物の一群が「和物」として取り扱われ、ハイドランジャーと呼ばれる大輪で目立つ西洋アジサイ、バラ、チューリップ等の開花を鑑賞する比較的派手な植物たちを「洋物」として取り扱うようです。

派手、地味だけの判別だけで単純に分けられるものではないこと、十分承知してますが・・・。

では、さて当の「苔玉」仕立てに向く植物は「和物」、それとも「洋物」? 

いやいや、一概にどちらとも言えません。鑑賞する人それぞれの好み、ケースバイケースだといえましょう。

 

 

大輪で目立つ西洋アジサイは、日本の幕末期にオランダの植物学者シーボルトが比較的地味な開花のヤマアジサイ、ガクアジサイを欧州に持ち帰り、ヨーロッパ各国で品種改良されたものなんです。

因みに、シーボルトが愛した長崎の女性「お滝」に思いを寄せて、アジサイを「オタキサン」と、命名したということです。

赤や白に今、開花真っ最中の「サツキ」は日本の花です。この「サツキ」や各種の「ツツジ」を、ベルギーを主とした欧州に持ち込んで品種改良されたものが「アザレア」と称される「西洋ツツジ」です。

比較的地味だった日本原産のツツジやアジサイの花も、欧州に渡って、派手目の花・園芸植物に変身して帰国したんですネェ。「和」でもいい、「洋」でもいい、ケースバイケースで好みの園芸植物を「苔玉」に仕立ててお楽しみください。

 

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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