【苔玉に寄せて】Vol.34〜苔玉を作り、育てる楽しみ
苔玉を作り、育てる楽しみ
苔玉作りに私が初めてチャレンジして、30余年が過ぎてしまいました。
この間に概ね一千余種の植物を苔玉に仕立ててきました。ツバキ等の常緑樹木、ケヤキ等の落葉樹木、ツワブキ等の多年生和物草花、山野草類、観葉植物類、ミニバラ等の洋種花木類、コチョウランを代表とする洋ラン類、各種の多肉植物類等々、多岐にわたる植物たちを苔玉に仕立ててきました。
職務柄、全国を出張旅行することが多い日々の生活の中で、自室で多種の植物たちと対峙し新たな姿や成長の様子を見る喜びは、新鮮な命と心湧きたってまいります。写真に見て頂くように、誠に狭い自宅のアトリエにこもって、植物たちを観察し、苔玉に仕立てていくと、ついつい時間の経つのも忘れてしまい、翌朝の日の出の時間になってしまうこと、しばしばです。ひょっとすると、ある種「植物オタク」に陥っているのかもしれません。
植物生命体は、大地に根を張ってすくすく成長させるのが、本来の姿です。だのに、敢えて狭小な苔玉台地に植物たちを押し込めてしまう訳です、植物にとっては迷惑千万なことでしょう。でも、植物たちは黙って私たち人間の言いなりの姿で我慢し耐えてくれる・・・・・苔玉に限らず、鉢植えも庭植えも、それが植物たちの宿命、敢えて言えば、「プラスチック製の鉢に閉じ込められなかっただけ、幸せ」かもしれません。
誠に狭い集合住宅の2階にある私のアトリエです、寒さ極まる冬期間は、植物の移動が大変な作業になります。午前中から夕刻に掛けては太陽光線を浴びさせるべく、ベランダに出し、夜は寒さに弱い植物から順に室内の出来るだけ高い棚の位置に取り込む。室温が僅かに1℃低下するだけで、植物によっては地表に近い根際部分から凍結し枯れてしまうからです。
そんなこんなの理由から、大きめに育った植物から順に、お友達、近隣の皆様にプレゼント、残した小さめの植物たちを仕立て育てるというローテーションを楽しむという次第。結果、多くの皆様方に喜んで頂いております。
これからも、更に多くの植物たちを苔玉に仕立て続けていきたいと、夢を膨らましております。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。