【苔玉に寄せて】Vol.39〜桜の苔玉(その二)
桜の苔玉(その二)
2月中旬から3月に掛けて、つくば市、仙台市、浦和市、新潟市などでサクラを使った苔玉教室を開催してきました。いずこの会場でも大変な盛り上がりでした。使ったサクラは、一重咲き山桜の系統「富士見桜」でした。日本に住む私たちにとって、桜花は他に代えがたい花なんですネェ。
咲き誇った染井吉野桜は花筏となって水面を流れて行く・・
一昨年の三月末、他界した大学時代の同期の友を桜花爛漫の京都で見送りました。散り去った友、いずれは残った自分等も、散ることになる、二条城界隈に咲き・散る桜に、切ない思いに駆られたことでした。
“ 散る桜 残る桜も 散る桜 ”
染井吉野桜など一重咲きの桜花の後を追い開花するのは八重咲種の桜です。稲作農家では、古来、八重咲種の桜の季節が「田植え」の時期の目安とされてきました。八重咲種にも多くの品種があります。大阪造幣局で有名な「桜の通り抜け」は、カンザン、フゲンゾウ、ショウゲツ、ヨウキヒなどの品種約130種、350余本の八重桜で多くの人々に愛されてきました。新宿御苑の桜も八重桜がその殆どを占めています。吉野桜など一重咲きの「山桜」の系統に対して、八重咲の桜を「里桜」と総称するのが一般的です。
八重咲種の桜花は、染井吉野等の一重咲き種に比べると、豪華絢爛な開花となります。欧米各国の公園等公共の施設に見られる桜は、八重咲種を多く見かけます。短命な一重咲き桜花を「花見」する私たち日本人と少々趣向が違うようです。
申し遅れました、「苔玉の桜」も八重桜の季節です。よく使われる品種に「旭山桜」「関山」「楊貴妃」などがあります。好みの豪華絢爛な八重桜を、苔玉に仕立ててみるのも一興だと思います。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。