【苔玉に寄せて】Vol.50~「一歳桜」の苔玉
「一歳桜」の苔玉
早咲きの桜「河津桜」が、あちこちで満開、今年は比較的春の訪れが早いように思います。「桜の苔玉を作ってみたい」、苔玉を楽しまれる方々も、この時節、桜への興味を抱かれます。多くの苔玉愛好家の皆様方と、ここ数年「桜の苔玉」を作ってきました。今年も、あちこちで「桜の苔玉」作りにチャレンジして頂いております。
古い時代から、桜といえば「花見」、大きく育った「桜の大木」の下で「花見の宴」が、私たち日本人の楽しみでした。本来、サクラは高木性の植物であって、背丈の低い若木・幼木では着蕾・開花することはありません。
桜を苔玉として楽しむには、花見するような大木では不向きです。苔玉に仕立てる桜は、背丈15~25㎝程度の矮性状況で開花する「一歳桜」と呼ばれる品種群を使うことになります。
このような、普通は高木性である樹木の種類の中に矮性で繁殖して、僅かな年数で開花・結実する品種群を「一歳植物」、あるいは「一歳物」といいます。「一歳桜」の代表的な品種群に「マメザクラ」があります。箱根・富士裾野界隈に自生していた「マメザクラ」に「富士桜」と命名されました。
「富士桜」の中でも、比較的早めに開花するものが「富士桜・さきがけ」です、また赤色度の強いモノが「赤花・富士桜」として、市場に出回っているという次第です。
サクラの他にも「一歳物」としてよく見かける植物に、「一歳ザクロ」、「一歳サルスベリ」など多く見みかけます。ひたすら、「一歳植物」に拘って、小型の高木を収集・趣味としておられる園芸愛好家も多くおられます。
私も「苔玉」を作るようになって35余年になりますが、苔玉向きの「一歳植物」を見つけざるを得ず、全国の園芸・植木産地を歩き回ることしばしばです。
サクラの苔玉にチャレンジして頂く中で、「一歳植物」という品種群があることをご紹介申し上げました。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。