【苔玉に寄せて】Vol.52~新型コロナウィルスと苔玉植物と!
新型コロナウィルスと苔玉植物と!
新型コロナウィルスが引き起こす恐怖で、多くの人々が家庭内で過ごす時間が多くなっている。
ご多分に漏れず、私も室内に閉じこもりがちな中で、自室にある苔玉等の植物たちと、じっくりと対峙しています。
一見、どの植物たちも元気そうに見えるが、よく見ると葉先が傷んだもの、ベランダの片隅で水切れして弱ってしまったもの等があります。普段の忙しさの故に、ついつい忘れていた苔玉などの植物たちを見直す、いい機会になっています。
片隅で忘れられ水切れして枯れてしまったものは廃棄処分、苔玉の上物植物が大きく育ってバランスを崩したものは剪定・整姿したり、苔玉部分を解いて植木鉢に戻したり、また、苔が痛んだものは苔を張り替えしたりと、コロナ休暇の暇つぶしどころではない、多忙です。苔玉はじめ多くの園芸植物たちとの対峙の中で、忘れていた植物管理に、反省やら植物たちに「ごめんね!」って詫びたり、改めて思いを致しています。
私は園芸・造園業等の経営コンサルティングで、全国のお店を経営指導方、歩き回っていますが、コロナ騒ぎの中にあって、園芸業の売り上げは、着実に伸びています。自宅待機を余儀なくされた人たちのささやかな楽しみとして、園芸がちょっとばかり浮上しているのかもしれません。
多くの人たちに苦悩をつきつけているこの新型コロナウィルスも、ワクチンの開発や対処薬でおさまる日もそれほど遠くはないでしょう。そして、私たちの体内に生息する大腸菌などと同様に、私たちと生きていくこととなるに相違ありません。
大型クルーズ船で遊びまわる前に、「私たちにも、少しばかり眼を向けて欲しい!」って、植物たちが共同戦線を張っているのかもしれません。
かく語る植物たちも多くの種類のウィルス病があって、園芸愛好家の悩むところです。バラの愛好家の悩みの根頭癌腫病や、日本の桜を痛めつける天狗巣病、生垣樹カナメモチをほぼ全滅に至らしめたウィルス病等々・・・・・
そしてまた、赤いチューリップの花に白色の斑入り模様が入ったと珍重されて高値を呼んだのは束の間、手の付けられないウィルス病だったという、オランダでの珍現象。新型コロナウィルス騒動下、苔玉たちと向かい合いながら、ウィルスたちとの同居人として思いを致し、達観せざるを得ないのかもしれません。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。