【苔玉に寄せて】Vol.53~苔 玉 の 形
苔 玉 の 形
苔玉が園芸愛好家たちにデビューして、30余年を経過しました。当初、市場に出回った苔玉は、水苔等で植物の根部をくるくると丸く握り固めた球状のものでした。根部が丸められていることから、「苔玉」という名称が一般的に使われるようになったと思われます。
その後、球状の苔部分を、お椀を伏せた形状に改良したり、なだらかな丘状に作ったりなどと変化進歩して今日に至っております。さらにオリヅルラン、アイビーなどの枝垂れ性の植物を吊るすタイプの「吊玉」に仕立て、手狭な室内空間に涼を演出したりなどしております
また、苔部分の直径4~5㎝程度のミニ苔玉に多種多様な植物を仕立てて、大変喜ばれています。ラカンマキ、テーブルヤシ、コーヒーの木、各種のアイビー、タマリュウノヒゲ、コクリュウなどが、そのいい例です。限られた生活空間で、多種多様な植物に触れることが出来るのです。
さらに、一部の園芸愛好家に人気のあるセッコク、コチョウラン、カトレアなど小型の着生蘭類の苔玉も脚光をあびつつあります。これらのラン類は、自然界では古木の幹や枝に着生・生存しています。その自然環境によく似た生育環境を苔玉として造ればいい・・・・
私は、着生蘭類の大きさに合わせて茶筒型の苔台座を作り、その天端に各種の着生蘭類を植え付け育てています。茶筒型苔玉を称して、「苔柱(こけちゅう)」と名付けております。「苔柱」の上は空気の流通まことに宜しく、また適度の空中湿度を植物体内に取り込むことが出来るためか、着生蘭たちは「苔柱」の上を、古木の幹・枝上と捉えてか、順調に生育しています。着生ラン類は余り多肥を好まず、この点も、苔と相性がいいようです。
ウィズ・コロナの私たちの生活認識は、少しずつ変化しているように思いますし、変化せざるをえないと考えております。大自然界で育つ植物たちの生育環境を理解して、私たちの苔玉も更に進化・発展させていきたいと考えております。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。