【苔玉に寄せて】Vol.54~新たな植物たちを「苔玉」に! チャレンジ!

新たな植物たちを「苔玉」に! チャレンジ!

 私が苔に興味を抱き始めて60余年、更に苔玉という形にして楽しみ始めて間もなく40余年を経過します。この間に苔玉に仕立ててみた植物の種類は、およそ1000余種になりました。60㎝~1m程度に育った花木類や果樹苗の苔玉に始まって、徐々に15~20㎝程度の小苗を苔玉に仕立て、また、多肉植物や観葉植物類を苔玉に仕立てたり、季節の花物にチャレンジしたりと、紆余曲折、今日に至っています。それでもなお飽き足らず、新たな植物を見かけると、苔玉化してデビューさせたいという意欲に駆られます。

 当の植物たちにしてみれば、大地に広く大きく伸ばしたい根っこを小さな苔団子に押し込まれて、いい迷惑なことでしょう。でも、小さな苔団子にくるまれてなお、小振りながらも立派なクロマツ、モミジ類、ケヤキ等の樹幹・樹形を呈してくれるのですから、満更ではないのだろうと・・・・・、しかも店頭に陳列されて多くの園芸愛好家に見てもらい、購入して頂くんです。

 庭先で、わずか3~4㎝程度に伸びたヤマモミジの自然実生苗を見つけました。子葉と本葉2枚程度のまことに小さな小さな幼苗、そっと掘り起こし、苔団子にそっと植え付けてみました。小さいながらも、ちゃんとモミジを主張しています。よし、2~3年育てて一人前のヤマモミジの苔玉に育て、園芸界にデビューさせてあげよう。

 庭先にそのまま放置しておいたとしたら、雑草の一部として刈り取られてしまった命、「ヤマモミジの小苗君、よかったネェ」と、語り掛けたところでした。きっと、小さな苔団子に押し込められても、「ヤマモミジの苔玉」として、華やかにデビューすることでしょう。

 身近に育つ「ヤマモミジの幼苗」に癒されつつ、更に新たな植物たちを苔団子に押し込んで、苔玉デビューさせていこうと、梅雨空の下、思いを巡らしています

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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