【苔玉に寄せて】Vol.55~生活自粛から自衛の生活へ〜「静」と「動」を楽しむ
生活自粛から自衛の生活へ
「静」と「動」を楽しむ
新型コロナウィルスが蔓延し、自粛生活を始めて8カ月余を経過するなかで、苔玉園芸も少しばかり揺れ動きました。店舗のオープン自粛に始まり、恐る恐るの再開店、開けてみたら「三密を避け」生活を自衛するにふさわしいエンターテイメントの一環として、趣味園芸が密かな脚光を浴び、苔玉も然り、ビフォアー・コロナにまで戻ってきたようです。
ヤマアジサイやシコンノボタン等の花木類、モミジ類やコナラ等の和モノの苔玉仕立ての植物が着実に人気を高めています。また、酷暑期に入って、小型の観葉植物類や赤い花が夏を彩るアンスリューム、涼しげな白花のスパティフィラムの苔玉仕立て植物が室内に彩りをもたらしているようです。夏の軒先を飾るシノブ類の吊苔玉は、今も昔も変わらぬ風物です。豊かになってきた生活環境の中で、時間を持て余し、大型クルーズ船での旅もままならない、否むしろ毛嫌いされてしまったアフターコロナ、身近な生活環境を楽しんでみようということなのかもしれません。

アンスリウムの苔玉

トキワシノブのつり苔玉
種を蒔き、苗を育て、花を楽しみ、果実を収穫するといった植物成長の流れは、大人にとっては楽しみではありますが、このゆるりとした流れは、幼いお子様たちには少々退屈な時間の流れのようです。「静」を求める大人と異なり、お子様たちは「動」をもとめる傾向が強い、お子様たちにとって静な植物たちよりも、動・すなわち「動物」こそが生活の中のエンターテイメントとなります。
「植物」の一環である苔玉の傍に「メダカ」をガラス容器に入れて並べてみました。早速、お子達のお眼にかなったようです、彼らが眼を着けてきました。お子達は狭い水の中を泳ぎ回る「メダカ」にくぎ付け、大人たちは緑の「苔玉」を楽しんでおられる、両方を上手に組み合わせることで室内に涼しげな超ミニ水・庭園が生まれる、そんなことを想起されているように思われました。
「苔玉」と「メダカ」たちの、具体的な室内での楽しみ方をご紹介しましょう。一寸と広めの生花用の水盤に水を張り、水面の高さの木炭を水面に立て、その上に「苔玉」を置く・すると広い水面に苔玉のアイランドができます。水盤の大きさ次第で、大・中・小のアイランドを2~3個作ると、それで涼しげで超ミニな水景観が生まれます。水面に「メダカ」を泳がせれば、お子様たちも大喜び、てな具合です。
苔玉には木炭を通して適度な水分が補給され、また、水盤内の水は、立て込んだ木炭故に常に浄化され、「メダカ」くんも「苔玉」も元気、お子様たちも大人の皆さんも楽しんで頂ける超ミニ水空間をお楽しみ下さい。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。