【苔玉に寄せて】Vol.60~四季・年中行事を彩る苔玉植物たち
四季・年中行事を彩る苔玉植物たち
昨年末から新年にかけて、私の部屋に「松・竹・梅」が勢ぞろいしました。「おめでたい」ことです、御節でも鰻重でもありません。クロマツ、ミリオンバンブー、ウメの苔玉の勢ぞろいです。松・竹・梅の苔玉に囲まれて、コロナ禍中、ささやかな迎春でした。

松(黒松)
2月の節分会には、煮干し魚を添えたミニヒイラギの苔玉が玄関口を飾ることとなり、3月3日にはハナモモの苔玉が室内に彩りを添えることとなります。正月、節分、ひな祭りと、古来より続く年中行事に合わせて、私たちの生活の中に多くの植物が関わっています。
この間、寒さ厳しい季節の中で咲誇るツバキやサザンカの開花を愛で、春を待つ心にロウバイ、トサミズキ、レンゲツツジ等、落葉花木の萌芽、開花が春を待つ心に期待を高めてくれます。
3~4月に掛かっては、各種のサクラの苔玉を楽しみ、4~5月にはヤエザクラの苔玉、また、5月初旬には端午の節句ということで、三寸アヤメの苔玉が楽しめます。初夏5~6月にはヤマアジサイやアマチャ等の苔玉が「母の日」の贈り物として人気上昇します。正月以来、すでに半年を経過しました。この間にバレンタインデーには、愛の証として深紅のミニチュアローズの苔玉がもてはやされます。

姫サルスベリ(百日紅)
初夏を彩る新緑、赤葉のモミジ類の苔玉の季節、ケヤキやコナラ等々の落葉樹木の苔玉、7月には矮性のサルスベリが開花、それにも増して多種に及ぶ観葉植物たちの登場です。アイビー、アジアンタム、アンスリューム、オリヅルラン、ガジュマル、テーブルヤシ、パキラ等々、暑さ厳しい中に涼しさを演出してくれます。
秋には落葉樹木たちの紅葉を苔玉で楽しむ、そして赤、白、ピンク、紫色のミニシクラメンの季節を迎え、更に年の瀬には赤実が美しいヤブコウジ、カラタチバナ、マンリョウ、ナンテンの苔玉が次年度の到来を告げてくれます。知らず知らずのうちに、飽くことなき植物たちのもたらしてくれる季節の変化、私たちの年中行事に彩りをもたらしていることに感謝です。

マンリョウ(万両)
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。