【苔玉に寄せて】Vol.66~広い地球上の植物たちとの出会い!
広い地球上の植たちとの出会い!
ベランダには今、緑いっぱいの「ナナカマド」の苔玉をバックに、「ブーゲンビリア」の苔玉が白色花、今を盛りと満開中です。「ナナカマド」は北海道・旭川市の美しい街路樹に代表される比較的寒冷地に育つ植物です。他方「ブーゲンビリア」は、沖縄やトカラ列島など亜熱帯地方で、生垣などに植え付けられ元気に育つ植物です。寒冷地・北海道から亜熱帯の沖縄までの植物たちを同時に観賞できる、なんとも嬉しくなります。
沖縄を越して更に南・赤道の向こう側、ニュージーランドを原産とする「ソフォラ」も緑濃く、「メルヘンの木」の愛称の世界を彩っています。その傍らには、秋田県白神山地を深い緑で覆う「ブナ」の苔玉も元気です。

メルヘンの木の苔玉
梅雨期の6月から7月上旬に掛けて、緑濃い苔玉の台地は、北から赤道の向こう側・南を原産地とする植物まで、広く・奥深い世界を演出しています。古来、北の園芸愛好家たちは南の植物に憧れ、また、その逆もありました。狭い苔玉の台地に、広い地球上の植物たちを目の当たりにして楽しむことができる、初夏の園芸を満喫しています。
更に、歴史上・地球規模での大航海時代には、東西の動きに新たな植物への期待がいっぱいでした。日本原産の「アジサイ」がシーボルトによって欧州にもたらされ、欧州で品種改良され「ハイドランジャー(西洋アジサイ)」として、里帰りしました。我が国古来の「ツツジ」たちは、主にベルギーで品種改良され「アザレア」と銘打って、園芸店頭に並んでいます。
植物たちを「苔玉」に仕立てて楽しむようになって、40余年になります。この間、概ね1000余種の植物たちを「苔玉」の台地に仕立ててきました。緑豊かな初夏・梅雨期に苔玉たちを管理して、改めて東西・南北に原産する多種の植物たちに出会えたことに、感謝・・・です。これからも更に新たな植物たちと出会いたいと、心密かに目論んでいるこの頃です。
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。