【苔玉に寄せて】Vol.67~庭先の小さな木の苗を苔玉に!

庭先の小さな木の苗を苔玉に!

 暑中・コロナ禍のダブルパンチを食らった日々、でも、庭先では植物たちが元気に伸長を続けています。そんな中で、10㎝程度に成長したヤマモミジ、コナラ、ケヤキ、ツバキなどの自然実生の小さな苗が、元気に育っています。これらの小苗は、将来の苔玉の材料として有望です。

 暑い中で小苗を移植するのは「不適期」を承知の上で、これらの小苗たちのポット(鉢)への移植をお勧めします。最も植物たちの目立つ今だからこそ、ヤル気も起ります。落葉してしまうと、ヤマモミジ、ケヤキがあったことを忘れてしまい、雑草として処分してしまうのが帰結です。

 直射日光を避けて、水管理をしっかりやって頂ければ、十分な地温が保証される夏です、一週間程度で新根の発生・成長をみることができます。近い将来の「苔玉」材料の誕生です。

 小苗たちを苔玉に仕立てるためには、小さなポット(鉢)に移植して、多くの根の発生を促す必要があります。移植するポットは直径6㎝(2号鉢)程度が最適で、大きくても7.5㎝(2.5号鉢)~9㎝(3号鉢)迄の小さなポットを準備して下さい。大きなポットに小苗を植え付けると、根部はひたすら外へ向かって伸長し、ポットの内壁部にのみ根群が成長発達してしまいます。結果として、大きな土塊の割には根群の極めて少ない、苔玉に仕立て辛い・・・苗木となってしまいます。

 植物は土壌に根を伸ばして成長し、根を張った箇所から移動することはできません。出来るだけ四方八方、外へ向けて根を伸ばし、あらゆるリスクを分散させようとする本能が働きます。ポットの内壁いっぱいに根を伸ばそうとするのは、当然の本能です。苔玉を作るには、根群は出来るだけコンパクトな状態に収まった植物であって欲しい、小さなポット(鉢)植えにする由縁です。

 更に茎葉と同様に、根群も比較的南側へ向かって発達します。時折、東西南北、向きを変えると、四方に均等に茎葉を伸ばします。

 3週間も経過すると丈夫な根群が育ちますので、極薄い液肥を与えると、立派な苔玉材料となります。ただし、気温の低下する10月中~下旬には肥料が切れるようにして下さい。

 庭先に息づく小さな植物たちを「苔玉」に仕立て上げることで、他では得られない植物たちへの思いが沸いてまいります。

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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