【苔玉に寄せて】Vol.69~ウィズ・コロナ下の「苔玉」園芸

ウィズ・コロナ下の「苔玉」園芸

 コロナ第5波がようやく収まったようです。長かった我慢の時は解禁され、苔玉教室も徐々に開講傾向にあり、ほっとしています。この間、植物管理もままならず傷んでしまった「苔玉」も多々あることでしょう。室内に置きっ放しで、苔部分が茶褐色~黒変してしまったものや、枯死してしまった苔玉等々、園芸植物たちも見直しに迫られている場面が想像されます。

 余り痛みが目立たない苔玉でしたら、枯葉等を切除・製枝して古い苔を剝がしとり新しい苔に貼り替え、新たな成長・出発を図ってみるのも一つの方法です。苔玉植物が傷んでしまっているようでしたら、苔玉部分をばらして鉢植えに戻すなどして植物の回復を図るべきです。植物達には逞しい生命力・復元力があって、手をかければ元気に回復・復元していきます。回復していく姿・過程を肌で感じて頂くのも園芸植物栽培、鑑賞の醍醐味だと思います。

苔が黒ずんでしまった苔玉

 日を追って元気に回復・復元していく植物達と肌を通して接するなかで、植物管理の本質を知らされ、以降の苔玉栽培・管理の有り様を知り、植物栽培・管理の楽しみが一段と増してくるはずです。私は長崎で7歳から祖母に教わり植物栽培に触れ、70有余年を過ぎましたが、萌芽の喜び、植物枯死の忌々しさを重ねて今日があります。

苔を巻き直して元気になった苔玉

 もちろん、完全に枯死してしまった植物に回復・復元を図ろうとする等、無理な話です。根っこから抜き取って捨てる、思い切りが必要です。枯れた園芸植物を身辺に置くなど、園芸を愛好する以前でしかありません。

 まだまだ、コロナ禍は完全に去ったとはいえないようです。在宅生活時間の長い中で、苔玉植物たちへの思いも変化させていくことかなぁ等々、思いを巡らせております。

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

LINEで送る
Pocket