【苔玉に寄せて】Vol.71~苔玉を作って35余年

苔玉を作って35余年
 過去35余年の間、苔玉作りを続けてきました。この間、概ね1000余種の植物を苔玉に仕立ててきました。素晴らしいと自己満悦したり、また失敗したことも多々ありました。
 
 一株の植物をじっと見つめ、さて、如何様に仕立てたものかと思いあぐねること、しばしばです。
 
 まずその植物の木表・木裏を見定めることに始まります。次いでその植物単体の苔玉に仕立てるか、あるいは下草をあしらったり、2種類以上の植物の寄せ植え苔玉にするか等、決めていきます。更に植物以外の添景物を添えることで自然の風景を演出したり、年中行事時節柄などに合わせての添景物を配置したりして四季折々の苔玉景観を作ったり等々しています。
 

ジャスミンの吊り苔玉

 
 皿上に置いて楽しむ通常のタイプの「置玉」にするか、蔓性植物であれば「吊玉」にするか、「吊玉」であれば2段・3段仕立ての大小の「連玉」にするかなど、決めます。また、フウラン等の和ラン類の場合、茶筒状の円柱苔玉に仕立ててフウランの特性を楽しむように仕立てます。「苔柱」と命名しております。また「ミニ玉」と称して、5~7㎝程度の極々小さな「置玉」や「吊玉」も、多くの方々に喜ばれています。
 

イチリョウの苔玉(アリドオシの苔玉)

 
 更にそれぞれの植物は微妙に植え替えの季節が異なります。植え替え時節に微妙に対応しながら、また、年中行事という人的条件にも答えていかなければなりません。今まさに年末・年始に向かってクリスマスの植物、年始の植物「松・竹・梅」と温故知新学ぶこと多い時節です。
 いずれの場合でも、苔玉に仕立てる植物の性質、生育環境等を十分に知らなければ、以降の順調な生育は期待できません。苔玉本体の「苔」についても当然のことですが、もともっと調査、試験の必要があると考えております。
 
 今日もまた、白花の美しい常緑性のクレマチス「アンスンエンシス」を見つめながら「置玉」にしたものか、「吊玉」にしたものか、また園芸用アルミ線を使って枝振りを曲げ矯正・整枝したものかと考えあぐねている真っ最中です。

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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