【苔玉に寄せて】Vol.77~苔玉林の同居人

苔玉林の同居人

 ベランダに鉢植え植物たちと共に多くの苔玉たちが並んでいます。その林間をスズメたちがウロチョロ、飛び跳ねています。どこからともなく、『チュッ・チュッ・チュッ』と、幼鳥たちの鳴き声・・・?!

苔玉林の奥の部分に、いつの間に造ったのやらスズメの巣・・・!見事な居巣の中で小雀たちが数羽鳴いていました。辺りでは『ジュジュッ、ジュジュッ』と、親鳥2羽が、怒った様子で威嚇さえずりです。早々にドアを閉じて室内に退避、観察しているとスズメの親子の会話が聞こえてきました。

此のところ、ベランダに置いていた苔玉材料の山苔や水苔がなんとなく散在する、なんでなんだろう・・・?との疑問が解けました。苔類をスズメたちが住居・巣材の建築材料に使っていたのでした。

私の作った苔玉、の林間に住み着いてくれたスズメ一家、親子の会話が聞こえてくる、嬉しくなってきました。歓迎の意を表わして、パン、菓子類、バナナ等の果物類の欠片を巣の周辺に置くと、喜んで啄んでいるようです。新たな同居人に気を使わざるを得ず、親鳥スズメの留守中に苔玉への潅水等々ソロリソロリとやっております。

スズメご一家のご来宅で、幼少の頃ジュウシマツ、カナリヤ、セキセイインコ等を飼った幼い日々を懐かしく思い出します。同居して、朝から元気な囀りを聞かせてくれるスズメたちに、元気をもらっています。

因みに現在の苔玉林は、クロマツ、大実ヤブコウジ、ヤマモミジ、夏ロウバイ等で構成し、更にベランダの手擦りにはオリヅルラン、トラデスカンチャ―、ムラサキオモト、ラン類等の吊玉タイプの苔玉で林相を呈しています。ベランダの苔玉たちに、更なる生命のストーリーをもたらしてくれたスズメの親子に感謝です、ありがとう。

幼いスズメたち、元気に育って巣立ちの日を迎えて欲しい、願っています。

 

 

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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