【苔玉に寄せて】Vol.83~クロマツの「苔玉」で長寿のお祝い!
クロマツの「苔玉」で長寿のお祝い!
60数年も以前のこと、私が高等学校3年生時の担任の先生、長嶺洋先生が92歳の誕生日を迎えられた。当時のクラスメイト10余人が故郷長崎・佐世保の地に集まり、お祝いすることとなりました。祝宴に当たり、記念品は何にしたものか?・・・
悩んだ末に、私、「宮内・作製の苔玉がいい」と、世話役同級生たちの結論・・・
という次第で、悩みは私・一人にバトンタッチ。さてさて植物は何を選定したものやら、どんな形に纏め上げたものやら、等々、責任重大・・・。悩んだ末に「黒松」の苔玉に思い至りました。早速に、良き樹形のクロマツを求めての植物探しです。「千歳松」と名付けられた香川県産の縁起良い黒松を探し当てました。京都市産の山苔を使って苔玉に仕立て上げ、松ボックリを添景物として何とか仕上げることが出来ました。
11月23日が佐世保で祝宴、前日22日に苔玉に仕立てた「千歳松」を荷造りし、新幹線を乗り継いで佐世保市に到着、翌祝宴会場に届けることが出来ました。
祝宴会場に恩師ご夫妻をお迎え、宴たけなわの中で、記念の千歳松を無事にお贈りし、肩の荷を降ろしたことでした。「磯馴れの松」形状に仕立てた黒松の苔玉に、恩師ご夫妻には喜んで頂き、つくばから九州佐世保市まで運んできた甲斐がありました。高等学校を卒業してより60有余年、お元気な恩師のお姿に触れ、乾杯、喜びを分かち合えたこと、誠に幸せです。
「磯馴(そなれ)松」の形状に仕立て上げた黒松の苔玉が祝の宴を一層盛り上げてくれたことに感謝です。恩師・友人たちには「よか盆栽だネェ」というお褒めを戴きましたが、「盆栽」域には及ばず、敢えて言うならば、「カジュアル盆栽」のクロマツとでも、言っておきましょう。
「長嶺洋先生!ご長寿おめでとうございます。益々のご健勝を祈念申し上げます。」
執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。