【コラム】苔玉に寄せて Vol.88~植物学者・牧野富太郎博士と苔玉

植物学者・牧野富太郎博士と苔玉

 月曜日~土曜日、NHKの朝の連続ドラマで、近世日本植物分類学の功労者「牧野富太郎博士」の生涯が放映されています。私たちが生きている地球上のすべての植物たちには、それぞれに特徴があり名前があるのだと、生涯をかけて日本の植物研究に携わられまた先生でした。毎朝、このドラマの放映を楽しみにしている此の頃です。

 私は、小学2年生(満7歳の頃)の頃に立っての願いで、原色・牧野植物図鑑を買ってもらいました。牧野先生の手によってデッサンされた、植物の素晴らしさに夢を描いた楽しい思い出があります。「三つ子の魂、百迄も・・・」とか、大学進学に当たっては園芸学を選択し、80歳間近い今日に至って尚、苔玉等を通して植物に携わっていること、誠に幸せです。

 苔玉を作るようになって40数年を経ました。この間に概ね1000余種の植物たちを苔玉に仕立ててきました。新たな植物と出会う度に、『苔玉に仕立てたら、どうだろう・・・・・?』との、チャレンジ心に駆られる次第です。極、平凡な「置き玉」、吊るすタイプの「吊り玉」、茶筒型の「棒状苔玉」、手の平に納まってしまう小さな「ミニ苔玉」等々と、植物の特徴に合わせて多様な苔玉を想起し楽しんでいる次第です。

 プラスチック製の植木鉢に植物たちを植えるのは素っ気ないし、さりとて「盆栽」に仕立てていくには相当の時間と技術を要するし、手軽な植物仕立て、云わば「カジュアル盆栽」的な範疇と捕らえて「苔玉」を見建てたらいいのかなと考えている次第です。苔玉として仕立てるなかで、多くの種類の植物たちと親しんできた過去40余年でした。これからも更に多くの種類の植物たちを苔玉に仕立てて、多くの人々の生活空間に植物たちを取り込んで頂きたく、植物チャレンジャーであり続けたいと思います。

 到底、牧野富太郎先生の植物の日々には及びませんが、放映される牧野先生の心意気に少しでも近づきたい・・・・・夢多き少年ならぬ、ボケ玉ジィさんです。

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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