【コラム】苔玉に寄せて Vol.99~苔玉、その後

苔玉、その後

 多くの種類の植物たちを『苔玉』に仕立てて45余年が経過しました。全国に老若男女・小学低学年のお子達から80歳代の高齢の方々まで苔玉仲間が拡がり、苔園芸を語り合い楽しませてもらっています。

 初に苔玉作りにチャレンジするに当たって、「苔玉って、この姿で何年もつのだろう・・・?」って問われること、しばしばありました。苔玉に仕立てる植物の種類、苔玉園芸の捉え方、あるいは管理方法にも依りますが・・・1~2週間で枯らしてしまう人、1ヶ月、3ヶ月と楽しまれる方、1年以上ももたせる人と様々でした。苔玉管理に徹底して3年・・・5年・・・10年の長きに渡って1個の苔玉を維持管理なさる方もおられます。

シクラメンの苔玉

 概してミニシクラメン等の草花類を苔玉に仕立てたモノは蕾から開花期程度までの短期間の苔玉寿命となり、シダ類、ヘビイチゴ等の多年生の山野草類やミニ観葉植物類の苔玉は数年間、苔玉姿を維持されるようです。

シダの苔玉

クロマツ、モミジ類等の樹木類の苔玉はかなり長期間に渡って苔玉姿を楽しませてくれます。いわば、『カジュアル盆栽』の域をなしているとでも言えましょうか。

マツの苔玉

ラン類、アイビー類、オリヅルラン、タニワタリ等、自然界では他の植物体に着生・寄生する植物達は、吊るタイプの苔玉として楽しまれています。適度な水管理次第で、かなり長期間に渡って『吊り玉』として楽しまれています。

アイビーの苔玉

様々なタイプの苔玉たちも、何れ苔玉内は発達した『根』で、いっぱいに満たされてしまいます。植物たちを、健全な姿で楽しむためには、苔玉部分の表面を新しい苔で巻き足し覆って植物本体の根部を保護する必要があります。あるいは、苔玉部分を崩して鉢植えに仕立て直す、などの転換が必要になります。

苔玉の植物たちも成長し、日々変化しています。限られた生活環境下で精一杯生きている植物達を、成長にあわせて育て続けたいと願っております。

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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