【コラム】苔玉に寄せて Vol.108~苔玉の樹形を整える
昨年末から新年にわたって、クロマツ、アカマツ、ウメ、ミリオンバンブー、マンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウ、ヤブコウジ等の苔玉を作った。いずれも新年を寿ぐ縁起物として多くの人々に慶んで頂いた。

これらの植物は、ポットに植え付けてあるそのままの形では鑑賞に値しない場合が多い。針金当を使って、自在に樹形を整える・・・あるものは枝振りをスパイラルに曲げたり、クロマツの枝をそ馴松「磯馴松」に見えるように枝を大きく曲げたりと、加工した。マンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウ類は、一本立ちでポットの中心にポツンと味気なく立っている。右に左に、また前や後ろに自在に枝を針金で誘引して枝振りを整えた。

出来上がった苔玉たちを見て、「盆栽苔玉みたいだなぁ」と、若い人たちに人気を博した。単に園芸用銅線で樹形を整えただけのことであったが、若い人たちの園芸に対する心眼に触れ、園芸愛好家として嬉しくなりました。さしずめ、「カジュアル盆栽」とでも位置づけられそうです。
植物への銅線針金かけには、細かい配慮が欠かせません。葉を巻き込まないように上手に針金をあてがったり、枝分かれ部分には支線の針金をあてがったり、また、針金の頂上をどこで打ち止めにするものか・・・アレコレ悩みながら針金巻きにチャレンジです。時折、無理を承知で針金掛けして、ポキンと大事な枝を折ってしまうこともあります。
そんな苦労の結果、思いのままの枝振りに仕上がった苔玉たちが出来上がったときは、心から嬉しくなります。古くから伝わる園芸技術を、広く伝承していきたいと願っております


執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。