【コラム】苔玉に寄せて Vol.115~ブルーベリーの苔玉

 ブルーベリーの枝先に、黒紫色の果実がたわわに実っています。ほんのり甘酸っぱい美味に誘われての実摘み収穫、暑い最中の重労働です。苔玉に仕立てておいたブルーベリー小苗にも、5~6個の果実が着きました。酷暑の中、よく可愛らしい果実を着けてくれたな・・・・・収穫するのは恐れ多く、小粒の黒紫色を鑑賞・堪能しております。

 『花より団子』・・・ブルーベリーの果実収穫を目的として庭先に小苗を植え付けた筈でした。濃緑色の枝葉に包まれ、たわわに実る黒紫色の果実・・・甘酸っぱい美味を知る舌先が騒ぎ立てます。一方で、苔玉仕立ての小さな黒紫色の小粒たちは、細やかに夏の音連れを演出しているようです。
 私たちが生命活動を維持していくには、まず『果実』が必要・・・・・腹を満たしたゆとりの中で、僅かに5~6個の果実揺らぐ枝先に夏の訪れを情緒し、美として堪能できること、まことに幸せなことです。

 私たちは家を建て居を構える・・・家回りのオープンスペースに、野菜の種・苗を植えて収穫する、更に片隅にウメの苗を植えて果実を収穫する・・・・・いつしか梅の花の美しい生活環境に育まれていく、それが『庭』の原点だった・・・・・ブルーベリーは、そんなことを語ってくれました。
 地方によって育つ植物は異なるし、気候も異なる・・・・・さらに国によっても生活環境は変わらざるを得ない、『食』と『庭』の在り様をブルーベリーが語り掛けてくれました。

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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