【コラム】苔玉に寄せて Vol.121~たかが苔、されど『苔』
『苔』は地球上のいたるところに散在します、都市部のどぶ板の片隅、国道の縁石の陰部、庭先から里山、熱帯の山林からツンドラ地帯の氷原下と、その生命力に驚かされます。私たちの庭先・生活空間にごく普通に見られる苔には26種類が存在しているということです。更に広く世界に目を向けると、植物学的には約2万種類の苔があります。
『苔玉』作りには里山や杉林等、身近な山林で採取された自然の『ヤマゴケ』を使うのが一般的です。山採りされた『ヤマゴケ』と通称される苔には、2~3種類の苔が混在するのが一般的です。一見すると一つ種類の苔に見える、だけど何種類かの苔が共生する自然の賜物です。苔玉に最適な種類の苔を栽培しては?・・・何度か試してみましたが、山採りの苔には及びません。

草地、田圃の畔、落葉灌木類の根本など、私たちの生活空間により近い比較的日当たりのよい場所に自生する『ハイゴケ』という種類の苔を使った苔玉も多々見受けます。『這い苔(ハイゴケ)』は葉がクルクルと巻いて地面の上に載っかって這っている種類で、鳥などが巣作りのため突いてひっくり返すといった悪戯を受けます。ために、有名な苔の庭園で使用されることは見かけたことがありません。ハイゴケの苔玉には時々日に当ててやらないと、緑色が色あせてしまいます。

『苔玉』が多くの愛好家に楽しんでもらっているのに、これが一番苔玉に向く苔だと断言できるモノがないのは残念な思いです。身近な所で採取可能、緑豊かに元気に育つ苔、苔玉として加工に向く苔を探しているのが現況です。
『たかが苔、されど苔』です、深みにはまってその奥深さに恐れ入っております。

執筆者紹介 – S.Miyauchiさん
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。