【コラム】苔玉に寄せて Vol.122~ポロポロほぐれる『苔玉』の根・土塊

 苔玉の基本的な作成方法は、丸い土部分を粘性の強い『ケト土』で薄く包み覆い、粘性度の高い土玉・表面に苔を張り付ける、という方法が行われてきました。この方法で作られた苔玉は土がポロポロと落ちたり、丸く作り整えた苔玉部分が壊れ易かったり、心もとない土塊です。更に粘性が強い『ケト土』で土塊表面を覆い包んでしまっては植物の根部は空気に触れることが困難になり、生育に障害をもたらす恐れがあります。こんな状態の苔玉を室内に取り込むことは心もとない、更に店頭に苔玉植物として陳列・販売することは、難しい?

 私が学生時代に体験した『植物の挿し木用土』のことを思い出しました・・・・・虫食いにあった古毛糸を3~4㎝に切り刻んで、腐葉土やミズゴケの代用として土に混入、挿し木用土として使ったところ、『誠にグー!』・・・・・古い毛糸布を苔玉土塊の梱包材とするに至りました。毛糸はしっかり含水すること、乾燥すると植物の根部や苔の載りが良い空間を保持すること、などが、『誠にグー!』のファクターとなったことでした。

苔玉人気が徐々に高くなり、古毛糸巻では間に合わない。窮して『ウール布』を反物で購入、水に浸して糊を水洗し、植物活力剤を浸み込ませて乾燥、適度の大きさに切断して、苔玉資材として定着させました。『ウール布』が目立たないために、焦げ茶~暗緑色~黒色に染色された『ウール布』が適します。苔玉部分がコンパクト、且つしっかり纏まっていることから、都市部のお洒落な店舗にも園芸商品として『苔玉』が位置づけられてきました。因みに一般に植物が順調に育つ土壌状態の容積比率は、『固相:気相=61:39』程度の実験結果であったこと・・・・・いわゆるフカフカ状態の土壌を記憶しています。

 瑞々しい濃緑色の苔に覆われた『苔玉』植物が、私たちの生活空間にいっぱい溢れればいいなぁ!・・・・・密かに夢描いています。

愛好家に楽しんでもらっているのに、これが一番苔玉に向く苔だと断言できるモノがないのは残念な思いです。身近な所で採取可能、緑豊かに元気に育つ苔、苔玉として加工に向く苔を探しているのが現況です。
『たかが苔、されど苔』です、深みにはまってその奥深さに恐れ入っております。

執筆者紹介 –  S.Miyauchiさん

日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について45年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。

 コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。

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