苔玉作りに当たっては、まず植物の自然界での生育特性に鑑みて、どのようなタイプの苔玉に仕立てるべきかを見定めることに始まります。置き玉、吊り玉、苔柱、ミニ玉等、いずれの形状の苔玉に仕立てるかを見定めます。その際、植物それぞれの自然界での生育環境、性質、特性等々をしっかりと検証することが大切な要件となります。オリヅルランは「吊り玉」に、セッコク等の小型東洋ラン類は「苔柱」タイプに、等々と決めていきます。マツ、モミジ、コナラ、ケヤキ等の独立木類は「置き玉」タイプに決定します。
オリヅルランの苦玉
次に、苔玉に仕立てる植物の木表・木裏をしっかり見つめる事です。併せて枝振りを見ながら、植物体の硬さ、柔らかさ等を見極め、アルミ線等を使って枝振りを縦に横にと曲げたりなどして人工的に矯正可能か否かなど見極めることになります。
更に、主たる植物に照らして「下草」を添植すべきか、あるいは景石、人形等の人工物などの添景物を配するか等々、決めていきます。一例をあげると、クロマツの根元にマツボックリを添えて、そこから松が芽を出し成長したかの如くに演出するなど、「苔玉」に何らかのストーリーを想起させるなどします。たかが一本の松の「苔玉」に過ぎませんが、添景物を付けることで、楽しい夢・想像を描いて頂きたいと考えております。
クロマツは5月上旬には新芽がニョキニョキと伸びてきますので、いわゆる「マツの緑摘み」作業が必要です。この作業を怠ると松の枝が間延びしてしまい、松の形状が壊れてしまいますので、ご用心下さい。
1月末に右手首骨折、手術治療を受けてより200余日を経、この間、苔玉の一つ一つに時間を掛けて見直すチャンスを得ることとなりました。怪我ゆえにこそ、苔玉作り、苔玉管理に当たって、細かい部分まで目が行き届くようになりました。「怪我の功名」とでもしておきましょう。
「微に入り細に入り」まで苔玉の制作・管理に気配りして、更に楽しい苔玉園芸に繋げて行きたいと、思いを致している此の頃です。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
桜花爛漫、心楽しい季節です。私の部屋ではエピデンドラムやデンドロビューム等の洋ラン類の苔玉たちや、ブーゲンビレアの花々が春を演出しています。小さな苔球体の中で冬籠り・必死で生き抜いてきた苔玉植物たちです、待望の春の訪れに、芽吹きし、開花と、大忙しの様子です。
春の陽射しを浴び新たな生命力に満ちた植物たちに刺激されて、私も心浮き立って「新しい苔玉を作ろう」の意欲に駆られます。春一番、骨折治療中に初チャレンジした苔玉作りは、年末年始に作りそびれていた余剰クロマツを苔玉に仕立てることに始まりました。比較的暖かい場所で管理してきたクロマツ苗は、すでに新芽が膨らみ始め、「みどり摘み」作業の必要に迫られるほどに伸長していました。更に、コロナ騒ぎ・私の骨折傷害等の故に閉講していた苔玉教室も30余名の方々のご参加の下、再開にぎつけることができました。サクラ(雲竜富士桜)の苔玉作りにチャレンジして頂き、一足早い花見を楽しんで頂いたことでした。
右腕骨折傷害の完全回復を期してリハビリテーションを兼ねて、少しずつ更なる苔玉作りに精進して行こうと考えている此の頃です。骨折治療する中で、こと、苔玉作り・苔玉管理等々についても教えられ、考えさせられること多々ありました。右腕不自由の中、一つ一つの苔玉植物を見つめざるを得ず、更なる思いやり・手入れが必要なことを気付かされました。普段は見過ごしてしまっていた小さな枯葉・枯れ枝を丹念に剪除することに始まって、養水分施用管理まで。今まさに植物たちの萌芽・開花の「春」です、更なる愛情込めた苔玉で、多くの人たちに植物の楽しみを知って頂きたいと思い描いております。
エピデンドラムの苔玉
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
室内で花を咲かせたミニバラの苔玉
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
リシマキア
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
十両(ヤブコオジ)の苔玉
一両(アリドオシ)の苔玉
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。