ジャスミンの吊り苔玉
イチリョウの苔玉(アリドオシの苔玉)
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
晩秋の園芸シーズンです。長かったコロナ戦下で必死の思いで命ながら得てきた苔玉植物たち、日照不足で軟弱にモヤシ伸びしてしまったモノ、水切れして枯死寸前のモノ、完全に枯れてしまったモノ等々、無残な状態にあります。忘れられていた園芸植物達にも少しばかり目を向け、何らかの手入れ・管理を施してやらねばと、反省・行動しております。
施肥すると苔が枯死してしまうという理由で全く施肥しなかったこと、更に小さな「苔球地上」で生きている植物達です、肥料切れ傾向に陥るのは当然です。肥料を与える等して、何とか健康な植物体に戻してやりたいと思うのは、園芸を愛する人たちに等しくあるはずです。
肥料切れして息絶え絶えの観葉植物類、樹木類の苔玉については、葉面から直接を吸収させる「葉面散布」を行います。散布とは言え噴霧器などで吹き掛けては、苔面にも肥料が掛かってしまい苔を痛め、遂には苔を枯らしてしまいます。ツバキ、サザンカやキンズ等、比較的葉数の少ないものでしたら2000~3000倍程に希釈したハイポネックス等の液肥を、葉面に筆で塗布しています。また、葉数多く、葉面積の広い植物苔玉の場合は、苔玉を天地逆さに持って、2000~3000倍程の希釈ハイポネックス等の液肥に苔部分が液肥に触れないように注意しながら枝葉部分のみを浸し、浸した液肥が完全に滴り落ちるまで苔玉を逆さ吊りして水溶液肥をきったのち本来の姿に戻す、という方法をとっています。
晩秋から年末にかけて開花を楽しむシクラメン、各種ラン類等の苔玉は、多くの人たちに楽しまれています。これらの花物では「花」を水溶液肥に直接浸しては、花を傷めてしまいます。この場合は、以前にもお話しました。苔玉の底根部分に注射器やスポイト等でほんの少しずつ、「苔」に希釈ハイポネックス等の液肥が触れないように注入する、という方法をとって下さい。
コロナウィルスとの戦いは、一段落したようです。でも、海外では更なる流行の様子、アフタ・コロナとは言い難く油断できません。待ち遠しかったコロナ明けウィズ・コロナ下、私たちの園芸も新たな賑わいを呈しつつあります。植物たちと一緒に、晩秋、年末、新年そして来春へと、健康な日々でありたいと願います
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
コロナ第5波がようやく収まったようです。長かった我慢の時は解禁され、苔玉教室も徐々に開講傾向にあり、ほっとしています。この間、植物管理もままならず傷んでしまった「苔玉」も多々あることでしょう。室内に置きっ放しで、苔部分が茶褐色~黒変してしまったものや、枯死してしまった苔玉等々、園芸植物たちも見直しに迫られている場面が想像されます。
余り痛みが目立たない苔玉でしたら、枯葉等を切除・製枝して古い苔を剝がしとり新しい苔に貼り替え、新たな成長・出発を図ってみるのも一つの方法です。苔玉植物が傷んでしまっているようでしたら、苔玉部分をばらして鉢植えに戻すなどして植物の回復を図るべきです。植物達には逞しい生命力・復元力があって、手をかければ元気に回復・復元していきます。回復していく姿・過程を肌で感じて頂くのも園芸植物栽培、鑑賞の醍醐味だと思います。
苔が黒ずんでしまった苔玉
日を追って元気に回復・復元していく植物達と肌を通して接するなかで、植物管理の本質を知らされ、以降の苔玉栽培・管理の有り様を知り、植物栽培・管理の楽しみが一段と増してくるはずです。私は長崎で7歳から祖母に教わり植物栽培に触れ、70有余年を過ぎましたが、萌芽の喜び、植物枯死の忌々しさを重ねて今日があります。
苔を巻き直して元気になった苔玉
もちろん、完全に枯死してしまった植物に回復・復元を図ろうとする等、無理な話です。根っこから抜き取って捨てる、思い切りが必要です。枯れた園芸植物を身辺に置くなど、園芸を愛好する以前でしかありません。
まだまだ、コロナ禍は完全に去ったとはいえないようです。在宅生活時間の長い中で、苔玉植物たちへの思いも変化させていくことかなぁ等々、思いを巡らせております。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
なかなか収束の兆しのみえないコロナ禍、私たちの生活は前向きに捉え辛い日々が続いています。「苔玉教室」などの人の集まる活動も抑制の止むなし、全国で展開している苔玉作りも少しばかり停滞しております。
時間的ゆとりのあるなかで、自室に育てる「苔玉」たちをじっくり眺めることが多くなった園芸愛好家の一人、私です。苔玉上部の植物が大きく育ち過ぎたもの、肥料切れして葉面が黄色変化しつつある苔玉、管理が行き届かない片隅で日光不足などの原因で苔が茶色に枯変色したもの、苔部分に雑草が元気に伸びたもの、ものによっては片隅で水切れしてカラカラになってしまったもの、等々改めて「苔玉」たちを見直している今日此の頃です。
つい7月末までは次々と赤色花を咲かせて楽しんでいた「アンスリューム」でしたが、やたらと背丈が伸びた苔玉になっていました。さて何としたものか? 思い切って「アンスリューム」の苔玉をばらし、7株に小分けしました。7株に分けたそれぞれの株を4号(12㎝)ポット1鉢、3号(9㎝)ポット1鉢、2号(6㎝)ポット5鉢に株分け植え付けしました。これら7鉢のアンスリュームをいずれ、7個の苔玉に仕立て直すつもりです。
肥料切れした苔玉たちには、施肥が必要です。でも苔部分に肥料が掛かると折角の苔が枯れてしまいます。私は、ハイポネックス等の液肥を3000倍程度に希釈し、筆を使って葉面に塗布・施肥しています。いわゆる「肥料の葉面散布」です。3日もすると肥効が表れ、緑の濃さを増した植物に変化します。
吊苔玉に仕立てたベンケイソウ科の多肉植物「ビアホップ」が猛暑下で15㎝程度に伸び垂れ下がっていました。余りに伸び過ぎて取り扱いに不便を感じておりましたので、垂れ下がった茎葉部分を切り取り、2号(6㎝)ポットに挿し木しました。いずれ多肉植物「ビアホップ」の2代目が育って来るはずです。
同様の状態にあるのがキク科の多肉植物「ミカヅキネックレス」の吊苔玉です。アイビー類、オリヅルラン、ポトス、ヘンリーヅタ等の吊苔玉たちも同様です。
コロナウィルスは次々と変異を重ねて、私たちの毎日の生活にまだまだ影響を及ぼし続ける気配です。コロナ蔓延防止ということで在宅生活の多くなる中、苔玉を始め過去楽しんでこられた園芸植物を見直す機会です、再度植物たちに親しまれたらと思います。コロナ明けして、また、多くの愛好の皆様方と園芸を語り合える日を楽しみにしております。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
暑中・コロナ禍のダブルパンチを食らった日々、でも、庭先では植物たちが元気に伸長を続けています。そんな中で、10㎝程度に成長したヤマモミジ、コナラ、ケヤキ、ツバキなどの自然実生の小さな苗が、元気に育っています。これらの小苗は、将来の苔玉の材料として有望です。
暑い中で小苗を移植するのは「不適期」を承知の上で、これらの小苗たちのポット(鉢)への移植をお勧めします。最も植物たちの目立つ今だからこそ、ヤル気も起ります。落葉してしまうと、ヤマモミジ、ケヤキがあったことを忘れてしまい、雑草として処分してしまうのが帰結です。
直射日光を避けて、水管理をしっかりやって頂ければ、十分な地温が保証される夏です、一週間程度で新根の発生・成長をみることができます。近い将来の「苔玉」材料の誕生です。
小苗たちを苔玉に仕立てるためには、小さなポット(鉢)に移植して、多くの根の発生を促す必要があります。移植するポットは直径6㎝(2号鉢)程度が最適で、大きくても7.5㎝(2.5号鉢)~9㎝(3号鉢)迄の小さなポットを準備して下さい。大きなポットに小苗を植え付けると、根部はひたすら外へ向かって伸長し、ポットの内壁部にのみ根群が成長発達してしまいます。結果として、大きな土塊の割には根群の極めて少ない、苔玉に仕立て辛い・・・苗木となってしまいます。
植物は土壌に根を伸ばして成長し、根を張った箇所から移動することはできません。出来るだけ四方八方、外へ向けて根を伸ばし、あらゆるリスクを分散させようとする本能が働きます。ポットの内壁いっぱいに根を伸ばそうとするのは、当然の本能です。苔玉を作るには、根群は出来るだけコンパクトな状態に収まった植物であって欲しい、小さなポット(鉢)植えにする由縁です。
更に茎葉と同様に、根群も比較的南側へ向かって発達します。時折、東西南北、向きを変えると、四方に均等に茎葉を伸ばします。
3週間も経過すると丈夫な根群が育ちますので、極薄い液肥を与えると、立派な苔玉材料となります。ただし、気温の低下する10月中~下旬には肥料が切れるようにして下さい。
庭先に息づく小さな植物たちを「苔玉」に仕立て上げることで、他では得られない植物たちへの思いが沸いてまいります。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。