“ 眼に青葉 山ほととぎす ・・・ ”
私の部屋に同居する苔玉たちも、青葉の初夏で賑わっています。ヤマモミジの嫋やかな黄緑の若葉、ノムラモミジの赤色の新芽、4月中旬に緑摘作業を施していたクロマツの力強い新芽立等々、その姿を見ると嬉しくなってきます。新緑の広い葉の中に、たくさんの蕾を着けたヤマアジサイやアマチャ等、間もなくの開花が、次なる楽しみをかきたててくれます。
ここはまことに小さな苔のミニ大地、苔玉空間です。苔たちも新緑の候には眩いばかりの緑の大地を呈しています。目を凝らして机上の苔玉と対峙すると、深緑のビロード状に拡がった苔の丘に、鮮やかな新緑の植物たち、苔玉の世界に引き込まれてしまいます。
私たちと共に、新緑を愛でる動物たちも存在します。身近なところでは、ちょっと油断すると、新芽いっぱいに群れて植物の新芽を食害する「アブラムシ」、よくもこんなに増えたものよと、恐れ入ってしまいます。御多分に漏れず、私のボケ、ツルウメモドキ等の苔玉たちもアブラムシの餌食になっています。ほとんどの場合、オルトラン水和剤などの殺虫剤散布で駆除するしかありません。
その一方で、昨秋からシタンジュに産み付けられていたカマキリの卵が孵化して、ベランダいっぱいにカマキリの幼虫群落様相を呈し、彼らがアブラムシを捕食しています。
ほんの数匹のアブラムシを見つけた場合には、丁寧にピンセットで掴み採って、飼っているメダカの水槽に浮かべます。すると、メダカたちが寄り集まって喜んで食べてくれます。メダカにとっては、大変美味しい天然食材となっているようです。当然のことですが、殺虫剤のかかったアブラムシをメダカの食材として利用することはできません。
新たな生命の息吹く新緑の苔玉空間は、まことに小さな世界ながらも、良きに付け悪しきにつけ、命の循環を見せてくれます。苔、植物たち、そして昆虫たち、メダカの学校、小さく狭いなかで生命の有り様を楽しみ、また、教えられています。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
こんにちは、くーこです。
4月に入り、新生活が始まった方も多いと思いますが、お元気でしょうか?日中の寒暖差も激しいので、体調を崩さぬようご自愛くださいませ。
スギ花粉もようやく飛びきったようなので、庭仕事を最近し始めました。まずは草取り。今年は雑草の出現が早く、例年だと4月の頭くらいにカラスノエンドウが芽を出すのですが、既に3月の時点で結構な大きさに!どくだみも生えてきてる!!カタバミの種は飛ぶし、当たると痛い!!!うちのご近所さんからは「毎朝5分草取りをすると、後が楽だよ」と教えてもらいましたが、ムリそうです…
雑草を抜いていると、その年々で勢いのある種類があると気が付きました。今年はドクダミが少ないな、とか。去年はホトケノザがすごかったけれど、今年はあまり見かけないな、とか。今年はカラスノエンドウ天国です。ひざ下くらいまで育ってしまいました。子供の頃はこのカラスノエンドウを見る度に、絶対に食糧になると思っていました。実際、さやは加熱すれば食べられるようですが、若いさやではないとめちゃくちゃ固く筋張っているそうなので、取る気になれず。穂先や花も食べられるみたいで、豆苗に似た味わいだそうですよ。マメ科の新芽なんだから当たり前って気もしなくもないですが、タダで収穫できるならやってみても良いかなと思っています。でも、アブラムシがついているからな~。
さて、今年の家庭菜園ですが、例年夏野菜を植えてきたのをやめました。去年は長雨と虫でほぼ全滅だったのと、息子が大きくなり収穫に興味を示さなくなったのが理由です。収穫できないと地味に落ち込みます。なので、家庭菜園改め、家庭ハーブ園を作りました。ミントを2種類、パセリ、クレソン、ローズマリーと、変わり種でスイスチャードと明日葉を植えました。スイスチャードは海外の料理番組で良く使われていて、ホウレンソウっぽく使えるそうです。明日葉は子どもの頃に伊豆大島でうどんに練り込まれていて、とてもおいしかったのを思い出し、作ってみようと思い立ちました。ローズマリーはスワッグやリースに仕立てたいな。前回は水やり過ぎでダメにしてしまったので、鉢植えにして管理することにしました。
ミントも増殖を防ぐためにプランターに植えました。それじゃないと庭がミントテロで大変なことになってしまうからです。これで一安心☆と思っていたら、通っている整骨院の患者さんで農林研にお勤めの方が、「繁殖力半端ないから、プランターを庭に直置きしちゃうと底から根が出て広がっちゃうよ」と教えてくださいました。なんと!!ミントなめていました。あわててデッキにあげることに。
ミントは種類も多く、一般的なスペアミントやペパーミント、マスターキートンファンならサマープディングに使われていたペニーロイヤルミントもご存知かもしれません。我が家はミントティー用にモロッコミントを、ソーダ割り用にキューバミントをチョイスしました。同じミントでも葉の大きさや柔らかさ、香りも全く違います。モロッコミントは香りが強く、キューバミントは穏やかです。うまくできれば、この夏は爽やかドリンクが楽しめるでしょう。
最後は、息子が本で読んで食べてみたくなったというラズベリー。果実系は成功したことがないので、一番安い苗を購入して、行燈仕立てにしてみました。買ったばかりの時はただの枝だったのが、3週間ほどで葉が茂り、もうすぐ花も咲きそうです。人工授粉はしないとダメそうですが、隣に毎年復活するイチゴがひとりでに実をつけているので、やらなくても大丈夫な気もします。ミツバチの姿はときどき見かけるのです。
初夏になれば、おそらくどの植えたものも食べられるはずなので、それを楽しみに日々水やりと観察をがんばります。
つくば市在住。現在子育て真っ最中のフリーライターさん。
学生時代より文芸部の部長を務め、大学では文学部に学び、現在も執筆活動を続けています。
趣味は長年続けているお菓子作り。みんなから頼りにされる緑と料理を愛する主婦です。
コラム「つくばで食べる・つくる・育てる 」は毎月第4土曜日に掲載予定です。
新潟市の新津地区に苔玉の材料を探しに来ている、
この地区はサツキツツジを代表とする花木類の生産地です。今年は春の到来が早く、ウメ、サクラ、ハナモモ、モクレン等、一挙に開花し、今まさに春爛漫。
今年の2月に過去最大級の豪雪に押し潰された農業用ハウスが多くみられ、折れたり曲がったりした植物や、寒さで枯れてしまった植物たちの残骸も多くみられ、天変地異に見舞われた生産者の皆様のご苦労をおもわずにはいられません。
そんな状況下で、目的の苔玉材料ですが、いろいろな種類の植物を見つけることができました。アマチャ、大実ヤブコウジ、コナラ、柏葉アジサイ、ケヤキ、姫サルスベリ、スモークツリー、西洋シャクナゲ、ナナカマド、二期咲き金毛ツツジ、ハナズオウ、ヒメウツギ、ヤマアジサイ、モミジ類、ユキワリソウ、レンゲツツジ等々、多くの植物を見つけました。
新潟の新津地区のほか、福岡県久留米地方、香川県高松市、兵庫県三田市、鹿児島県鹿屋市、長崎県島原市、茨城県かすみがうら市、愛知県豊田市、埼玉県川口市、東京都八丈島等々、いい材料を見つけるには、全国の花卉・花木類の産地を歩くことが必要になります。また、肝心な苔については、山形県、新潟県、兵庫県、滋賀県等、日本海側の地方で見つけることになります。太平洋側では夏季・冬期の乾燥が影響して、あまりいい苔を見つけ辛い側面があるからです。
植物の生産地それぞれに、特徴ある気候など自然環境にあわせて、特産植物が生産・出荷されています。産地を歩き、多くの種類の植物たちの中から、苔玉に見合った植物に出会ったときの喜びは格別です。
雪害、暴風雨、乾燥などの天変地異の中で、多くの生産者の方々の努力の下で育成・栽培されている各地の特産植物たちです。生産される皆様方に脱帽・敬服です。苔玉という姿で、私たちの眼を楽しませてくれる植物たち・・・多くの災厄をかい潜って来てくれました。よく来てくれたネェ!・・・感謝です。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
こんにちは、くーこです。
こちらでは桜が咲き始め、おそらくこのコラムがサイトに載る頃には満開を迎えそうです。今年もお花見は自粛しなくてはならなさそうですが、それでも通りすがりに見かけるとふわふわした気持ちになりますね。淡いピンク色がそうさせるのでしょうか。
さて、新型コロナの自粛が始まって、早一年。調理家電の売れ行きが好調だったそうです。
コロナの感染予防のために外食を控え自宅で食事を楽しむためだったり、在宅勤務中の調理の手間を少しでも減らすためだったりと様々な理由があるようですね。
その売れ行き好調の家電の中に「ホームベーカリー」の名前も挙がっています。焼き立てのパンを気軽に作れるのが理由なのだとか。我が家にも10年以上も前に購入した今はなきナショナル製のホームベーカリーが現役で活躍しています。パンだけではなく、うどんやパスタをこねたり、餅をついたりと、機能以上のことをやってもらっていて、間違いなく我が家で買って良かった家電ベスト5のひとつです!
コロナ前までは材料入れてスイッチポンでしかパンは焼いたことがなかったのですが、子どもが休校で時間を持て余してしまい、パンを作ってみたいと言いだしました。これはパン職人の夫の出番でしょ!とお願いしたら、材料の分量と「これあれば作れるよね?」のセリフのみ。はい、バイトで作っていましたからね。やれないことはない。たぶん。
といっても、一番大変な生地の練り捏ねはホームベーカリーにお任せだし。気を付けないといけないのは、分割と成型のみ。生地を分ける分割は少ない回数で目標の重さにしていきます。生地を切り刻んじゃうとグルテンがいろんな方向を向いてしまって、膨らみが変わってしまうのです。夫「分割は何回まで?」私「2回までです!!」軍曹が隣で見張っているので、やりにくいことこの上なしです。
成型はパン屋さんがやっているような掌でクルクルする丸め方をしないで、ベタベタした面を内側に内側に数回織り込んで、止め終わりをきちんととじてあげるだけ(「肉まんのてっぺんみたいな感じ」で伝わるでしょうか?)でOK。表面がきれいに膜が張っていればそれで十分で、必要以上に触ると固いパンになっちゃうんです。なので、ここは息子と一緒にやりました。意外と子どもの方が上手にできるんですよね。あとは発酵させて焼くだけ。簡単にふわふわのパンが作れました。良く作ったのはミルクパン。ミルクパンの生地だといろいろ応用が利くので、クルミパンやシナモンブレッドなんかもできちゃいます。基本の生地のレシピを載せておくので、興味がある方は作ってみてくださいね。
ここ1ヶ月は1斤の食パン型を手に入れたので、生食パンを研究しています。なかなか上手くいかないのですが…しばらくパン焼き生活が続きそうです。
・強力粉250g
・砂糖20g
・塩3g
・無塩バター20g
・ドライイースト3g
・スキムミルク10g
・牛乳180g
① ホームベーカリーを生地モードにして、打ち粉以外を入れて生地を作る
② できた生地を6等分にして、角を折り込むようにして丸め、固く絞った濡れ布巾をかけて15分休ませる(ベンチタイム)
③ ②の生地のとじ目をしっかりとじ直したら、鉄板に並べ、あたたかいところに40分くらい、1回り大きくなるまで置く(2次発酵)
④ 2次発酵が終わったら、③に分量外の強力粉を茶こしでふりかけて、中央に切り込みを浅く入れる
⑤ 190℃に予熱したオーブンで15分前後焼いて完成
*ホームベーカリーの全自動モードで焼くと牛乳食パンになります。
つくば市在住。現在子育て真っ最中のフリーライターさん。
学生時代より文芸部の部長を務め、大学では文学部に学び、現在も執筆活動を続けています。
趣味は長年続けているお菓子作り。みんなから頼りにされる緑と料理を愛する主婦です。
コラム「つくばで食べる・つくる・育てる 」は毎月第4土曜日に掲載予定です。
今、溢れる廃棄プラスチックは、地球規模での環境破壊・ゴミ問題となっています。私たちの生活のありとあらゆる場面に、プラスチック製品が出回っています。昨年、五島列島を旅しましたが、美しいはずの海浜に、ハングル文字の印刷されたプラスチック・ゴミが大量に漂着していたことで、国際問題となっている廃棄プラスチック・ゴミに思いを致したことでした。
ところで、さて、私たちの園芸も少なからず高分子化学の成果、プラスチック素材文明の恩恵に浴しています。花苗、野菜苗は黒丸プラスチック鉢に仕立てられて大量に販売され、果樹や花木の苗も然り、大き目の塩ビポットに仕立てられて店頭に並んでいます。更に鉢仕立ての花や観葉植物などは、プラスチック製の鉢に植え付けられて店頭に並んでいます。身近な私たちの生活空間に溢れる花、観葉植物等々、その殆どがプラスチック製容器に植え付け仕立てられています。
米国ロサンゼルス郊外にある世界最大の植木生産会社、「モンロビア・ナーセリー」を訪ねたことがあります。ここでは殆んど全ての植木が、プラスチック製容器で仕立てられて、広大な生産圃場に並べられていました。
軽くて割れない、そして大量輸送が可能になったプラスチック製の植木鉢の出現が、今日の飛躍的に成長した園芸マーケットを生み出すことに貢献してくれたこと、疑う余地ありません。
結果、使われなくなり古びたプラスチック製の植木鉢、プランター等々の残骸が、学校や駅の片隅に放置されている光景を全国至る所で見受けること、まことに残念です。
こうした中で35余年以前頃から流行ってきた「苔玉」園芸は、過剰なプラスチック園芸に対する「密かな反抗」であったのかもしれません。生理的にプラスチック製植え付け容器に嫌気がさして、「苔」に包まれた植物に癒されている面も大いにあるものと考えています。
新型コロナウィルス禍中、多くの人々にとって身近なエンターティメント・園芸は春に向かって、今まさに盛りです。花や野菜を楽しみながら、更に、廃棄プラスチックにも思いを致さなければと考えています。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。