苔玉教室の中で、よくある質問に、「この植物は何科に属する植物ですか?」と問われることが多くあります。「エッ、桜がバラ科に属するんですか!」って、驚かれたり、また「なるほどネェ」と納得してもらったりと様々です。いずれにしても、より深く、詳しく植物を知りたい、興味を抱いて頂くこと嬉しく、質問にお答えしています。
桜の苔玉
バラの苔玉
「科名」とは、植物分類学上の一つの段階であって、「科名」から植物を探すことが出来ますし、同じ科の植物一覧などから植物の育て方、基本情報などを知ることも出来ます。「科名」に興味を持っていただくことは、植物探求の第一歩かもしれません。
私が植物分類学を学んだのは、大学時代に佐藤清明先生(昭和天皇が岡山下向なさった折の植物のご案内を務めた植物学者で、牧野富太郎先生とも別懇の中)の講義を受けてからのことでした。55余年も以前の昔々のことです。岡山大学の後背にある広大な大学演習林を歩きながら、野に生育する植物を指し示しながら、誠に気さくに、だけど懇切丁寧に植物の多くをお話頂き、深く感銘したこと、忘れられません。
苔玉植物たちと触れるなかで、その植物の「科名」検索に始まって、更に奥深い植物たちとの触れ合いを多くの人たちに体験して頂きたいと願っております。新型コロナウィルス渦中、ともすれば巣ごもり型の生活を余儀なくされる毎日です。苔玉植物の一つ一つに触れて頂き、より深く植物探索して頂くことで、新たな楽しい時間を過ごして頂けるものと信じております。狭い園芸工房・私の部屋には、多くの種類の植物たちが緑をいっぱいにひろげています。いろいろな植物たちと触れ合いながら、今は亡き佐藤清明先生にもっと多くのことを学んでおきたかったと悔い反省し、コロナ禍巣ごもりしています。
植物学者 佐藤清明 先生
~ リーフレットより引用
因みに、岡山県内に佐藤清明記念館が設立・開園しているはずです。
コロナウィルス制圧できた折には、是非、佐藤先生記念館を訪ねたいと、思いを致しているところです。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
新型コロナウィルスが蔓延し、自粛生活を始めて8カ月余を経過するなかで、苔玉園芸も少しばかり揺れ動きました。店舗のオープン自粛に始まり、恐る恐るの再開店、開けてみたら「三密を避け」生活を自衛するにふさわしいエンターテイメントの一環として、趣味園芸が密かな脚光を浴び、苔玉も然り、ビフォアー・コロナにまで戻ってきたようです。
ヤマアジサイやシコンノボタン等の花木類、モミジ類やコナラ等の和モノの苔玉仕立ての植物が着実に人気を高めています。また、酷暑期に入って、小型の観葉植物類や赤い花が夏を彩るアンスリューム、涼しげな白花のスパティフィラムの苔玉仕立て植物が室内に彩りをもたらしているようです。夏の軒先を飾るシノブ類の吊苔玉は、今も昔も変わらぬ風物です。豊かになってきた生活環境の中で、時間を持て余し、大型クルーズ船での旅もままならない、否むしろ毛嫌いされてしまったアフターコロナ、身近な生活環境を楽しんでみようということなのかもしれません。
アンスリウムの苔玉
トキワシノブのつり苔玉
種を蒔き、苗を育て、花を楽しみ、果実を収穫するといった植物成長の流れは、大人にとっては楽しみではありますが、このゆるりとした流れは、幼いお子様たちには少々退屈な時間の流れのようです。「静」を求める大人と異なり、お子様たちは「動」をもとめる傾向が強い、お子様たちにとって静な植物たちよりも、動・すなわち「動物」こそが生活の中のエンターテイメントとなります。
「植物」の一環である苔玉の傍に「メダカ」をガラス容器に入れて並べてみました。早速、お子達のお眼にかなったようです、彼らが眼を着けてきました。お子達は狭い水の中を泳ぎ回る「メダカ」にくぎ付け、大人たちは緑の「苔玉」を楽しんでおられる、両方を上手に組み合わせることで室内に涼しげな超ミニ水・庭園が生まれる、そんなことを想起されているように思われました。
「苔玉」と「メダカ」たちの、具体的な室内での楽しみ方をご紹介しましょう。一寸と広めの生花用の水盤に水を張り、水面の高さの木炭を水面に立て、その上に「苔玉」を置く・すると広い水面に苔玉のアイランドができます。水盤の大きさ次第で、大・中・小のアイランドを2~3個作ると、それで涼しげで超ミニな水景観が生まれます。水面に「メダカ」を泳がせれば、お子様たちも大喜び、てな具合です。
苔玉には木炭を通して適度な水分が補給され、また、水盤内の水は、立て込んだ木炭故に常に浄化され、「メダカ」くんも「苔玉」も元気、お子様たちも大人の皆さんも楽しんで頂ける超ミニ水空間をお楽しみ下さい。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
私が苔に興味を抱き始めて60余年、更に苔玉という形にして楽しみ始めて間もなく40余年を経過します。この間に苔玉に仕立ててみた植物の種類は、およそ1000余種になりました。60㎝~1m程度に育った花木類や果樹苗の苔玉に始まって、徐々に15~20㎝程度の小苗を苔玉に仕立て、また、多肉植物や観葉植物類を苔玉に仕立てたり、季節の花物にチャレンジしたりと、紆余曲折、今日に至っています。それでもなお飽き足らず、新たな植物を見かけると、苔玉化してデビューさせたいという意欲に駆られます。
当の植物たちにしてみれば、大地に広く大きく伸ばしたい根っこを小さな苔団子に押し込まれて、いい迷惑なことでしょう。でも、小さな苔団子にくるまれてなお、小振りながらも立派なクロマツ、モミジ類、ケヤキ等の樹幹・樹形を呈してくれるのですから、満更ではないのだろうと・・・・・、しかも店頭に陳列されて多くの園芸愛好家に見てもらい、購入して頂くんです。
庭先で、わずか3~4㎝程度に伸びたヤマモミジの自然実生苗を見つけました。子葉と本葉2枚程度のまことに小さな小さな幼苗、そっと掘り起こし、苔団子にそっと植え付けてみました。小さいながらも、ちゃんとモミジを主張しています。よし、2~3年育てて一人前のヤマモミジの苔玉に育て、園芸界にデビューさせてあげよう。
庭先にそのまま放置しておいたとしたら、雑草の一部として刈り取られてしまった命、「ヤマモミジの小苗君、よかったネェ」と、語り掛けたところでした。きっと、小さな苔団子に押し込められても、「ヤマモミジの苔玉」として、華やかにデビューすることでしょう。
身近に育つ「ヤマモミジの幼苗」に癒されつつ、更に新たな植物たちを苔団子に押し込んで、苔玉デビューさせていこうと、梅雨空の下、思いを巡らしています
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
苔玉が園芸愛好家たちにデビューして、30余年を経過しました。当初、市場に出回った苔玉は、水苔等で植物の根部をくるくると丸く握り固めた球状のものでした。根部が丸められていることから、「苔玉」という名称が一般的に使われるようになったと思われます。
その後、球状の苔部分を、お椀を伏せた形状に改良したり、なだらかな丘状に作ったりなどと変化進歩して今日に至っております。さらにオリヅルラン、アイビーなどの枝垂れ性の植物を吊るすタイプの「吊玉」に仕立て、手狭な室内空間に涼を演出したりなどしております
また、苔部分の直径4~5㎝程度のミニ苔玉に多種多様な植物を仕立てて、大変喜ばれています。ラカンマキ、テーブルヤシ、コーヒーの木、各種のアイビー、タマリュウノヒゲ、コクリュウなどが、そのいい例です。限られた生活空間で、多種多様な植物に触れることが出来るのです。
さらに、一部の園芸愛好家に人気のあるセッコク、コチョウラン、カトレアなど小型の着生蘭類の苔玉も脚光をあびつつあります。これらのラン類は、自然界では古木の幹や枝に着生・生存しています。その自然環境によく似た生育環境を苔玉として造ればいい・・・・
私は、着生蘭類の大きさに合わせて茶筒型の苔台座を作り、その天端に各種の着生蘭類を植え付け育てています。茶筒型苔玉を称して、「苔柱(こけちゅう)」と名付けております。「苔柱」の上は空気の流通まことに宜しく、また適度の空中湿度を植物体内に取り込むことが出来るためか、着生蘭たちは「苔柱」の上を、古木の幹・枝上と捉えてか、順調に生育しています。着生ラン類は余り多肥を好まず、この点も、苔と相性がいいようです。
ウィズ・コロナの私たちの生活認識は、少しずつ変化しているように思いますし、変化せざるをえないと考えております。大自然界で育つ植物たちの生育環境を理解して、私たちの苔玉も更に進化・発展させていきたいと考えております。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
新型コロナウィルスが引き起こす恐怖で、多くの人々が家庭内で過ごす時間が多くなっている。
ご多分に漏れず、私も室内に閉じこもりがちな中で、自室にある苔玉等の植物たちと、じっくりと対峙しています。
一見、どの植物たちも元気そうに見えるが、よく見ると葉先が傷んだもの、ベランダの片隅で水切れして弱ってしまったもの等があります。普段の忙しさの故に、ついつい忘れていた苔玉などの植物たちを見直す、いい機会になっています。
片隅で忘れられ水切れして枯れてしまったものは廃棄処分、苔玉の上物植物が大きく育ってバランスを崩したものは剪定・整姿したり、苔玉部分を解いて植木鉢に戻したり、また、苔が痛んだものは苔を張り替えしたりと、コロナ休暇の暇つぶしどころではない、多忙です。苔玉はじめ多くの園芸植物たちとの対峙の中で、忘れていた植物管理に、反省やら植物たちに「ごめんね!」って詫びたり、改めて思いを致しています。
私は園芸・造園業等の経営コンサルティングで、全国のお店を経営指導方、歩き回っていますが、コロナ騒ぎの中にあって、園芸業の売り上げは、着実に伸びています。自宅待機を余儀なくされた人たちのささやかな楽しみとして、園芸がちょっとばかり浮上しているのかもしれません。
多くの人たちに苦悩をつきつけているこの新型コロナウィルスも、ワクチンの開発や対処薬でおさまる日もそれほど遠くはないでしょう。そして、私たちの体内に生息する大腸菌などと同様に、私たちと生きていくこととなるに相違ありません。
大型クルーズ船で遊びまわる前に、「私たちにも、少しばかり眼を向けて欲しい!」って、植物たちが共同戦線を張っているのかもしれません。
かく語る植物たちも多くの種類のウィルス病があって、園芸愛好家の悩むところです。バラの愛好家の悩みの根頭癌腫病や、日本の桜を痛めつける天狗巣病、生垣樹カナメモチをほぼ全滅に至らしめたウィルス病等々・・・・・
そしてまた、赤いチューリップの花に白色の斑入り模様が入ったと珍重されて高値を呼んだのは束の間、手の付けられないウィルス病だったという、オランダでの珍現象。新型コロナウィルス騒動下、苔玉たちと向かい合いながら、ウィルスたちとの同居人として思いを致し、達観せざるを得ないのかもしれません。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。 つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。