厳しい寒さの中、凛と開花する紅白の梅が、新春の息吹をもたらしています。
濃緑の苔の丘に赤、ピンク、白花の苔玉仕立盆景の梅も園芸店頭を賑わしています。一足早い早春の訪れに、心躍り身の引き締まる思いです。
苔玉で花を楽しんだ後に、5~6月には梅の果実も着け楽しみたいと希望される方も多く、「どうしたらいいの?」と問われること、しばしばです。花が咲いたら果実が着く、自然の成り行きで、期待されるのは当然でしょう。
ウメという植物には、同じ品種の雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)の間では決して結ばない、「自家不和合性」という性質があります。同一親族間で結婚しては「ウメ」という種が弱体化して行く、ということを本能的にウメは知っており、それを避けているんです。ウメに結実させるには、必ず異なる品種のウメが1本ずつ必要です。
「いやそんなことはない、うちの庭先の梅は、1本でも毎年必ず実を着ける」と、言われることもしばしばです。「家主の知らぬ間に、隣近所の庭先にある梅と浮気してますよ」と説明、「そういえば確かに三軒先に梅の木があったなぁ!」と、一件落着。
それでもなお、1本でも結実する場合があります。白梅に紅梅を接木した、めでたい紅白の梅の木など、人為的に1本の木に2品種を同居させた場合です。おめでたい紅白で、結婚も成立させる、先人の知恵に敬服します。観梅で有名な水戸の偕楽園には、約100品種のウメが、計300余本、植えられています。その結果、6月頃に梅の実の収穫が行われています。
5~6月に梅の苔玉に果実を期待されるのならば、全く異なる品種の梅の苔玉を1本ずつ、計2本、並べてお楽しみください。苔玉の梅の木に、見事な果実が着く、素晴らしい景観となることでしょう。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
もしも Active Note がカフェをオープンしたら…
そんな空想をちょっとだけ形にしてみました。
毎月おすすめの緑と、テーマに合わせたカフェレシピを紹介していきたいと思います。
こんにちは、店員くーこです。
早いもので、もうすぐ1年が終わろうとしています。先日、友人に誘われて、卓上門松を作ってきました。細い竹でものこぎりで切るのはなかなか大変でしたが、少しずつ新年を迎える準備をするのは楽しいですね。
さて、新年最初の国は、Moss Cafeらしく、世界中の花の6割が集まる国「オランダ」にしてみました。
オランダと言えばチューリップのイメージが強いですが、ヒヤシンス・ユリ・バラ・水仙などの輸出も盛んです。何より、オランダ人は花が大好きで、花が活けてないテーブルの家は完璧ではないそうです。
そんなオランダの年越しは、「花火」なんだとか。うちの近所の某世界一高い大仏様のところでも花火は上がりますが、オランダの年越し花火は市民が自由に花火を買い込み、新年になったら打ち上げるんだとか。一般市民が打ち上げる花火なんて…と思いましたが、写真などを見ると立派な打ち上げ花火???それもそのはず、通常は危険なため販売禁止な花火を12月29~31日の期間限定・年齢制限、購入量制限有で売られるかなり本格的なもののよう。それを1時間近く国中で打ち上げたら、圧巻でしょうね。
花火を見ながら食べるのは、「オリボルン」と呼ばれるドーナツ。
あちらこちらに屋台が出ていて、ビールと一緒につまむそうです。甘いお菓子にビールって、日本ではあまりやらない組み合わせですよね。
外はカリカリ、中はモチモチのオリボルンを作る秘密は、小麦粉と牛乳を1:1にすることらしく、あとは好みでレーズンなどのドライフルーツを混ぜるのもおいしいそうですよ。
揚げる時の注意点は、イーストが入っているのでかなり膨れます。小さじ1ぐらいずつ落としてあげるとちょうど良い大きさになり、上手に揚がりますよ。生地自体はそんなに甘くないので、粉糖やシナモンシュガーをたっぷりかけて食べてみてくださいね。
<レシピ>
◎ 材料(ピンポン玉大10個分)
◎ 作り方
◇準備:ドライフルーツを入れる時は、ぬるま湯につけてもどしておき、
水気をしっかり拭き取っておくこと
育てやすさ: ★★★
オランダで栽培されているのは「ダッチヒヤシンス」と呼ばれる花が密に咲き香りが強い品種。お正月のアレンジメントにも華やかで良いかも?ヒヤシンスの名前はギリシャ神話の美少年「ヒュアキントス」に由来していて、三角関係のもつれから、円盤投げの円盤に当たって死んでしまい、その血から咲いたのがヒヤシンスだったという、結構悲しいお話だったりする。(かなりざっくりな説明です)
花言葉も神話に関係したものが多い。
花言葉は 紫(悲哀)、黄(勝負)、ピンク(スポーツ、淑やかなかわいさ)、白(心静かな愛)、青(変わらぬ愛)。
つくば市在住。現在子育て真っ最中のフリーライターさん。
学生時代より文芸部の部長を務め、大学では文学部に学び、現在も執筆活動を続けています。
趣味は長年続けているお菓子作り。みんなから頼りにされる緑と料理を愛する主婦です。
コラム「 おうち Moss Café 」は毎月第4土曜日に掲載予定です。
年末年始の園芸店には、クロマツやヤブコウジ、ナンテン、ポインセチア等の木本性の植物や、シクラメンやフクジュソウ等の草本性の植物が、クリスマス、正月気分を賑わしています。これらの年末年始の園芸植物を「苔玉」として楽しむ方も多くみられます。
「苔玉って、どの程度の期間、楽しめますか?」って、苔玉愛好家の皆様々から問われること、しばしばです。「管理次第で3年~5年間は楽しめます」と、お答えすることで終わる場合がほとんどです。しかし、「植物の種類によりけりで、大きく異なります」といった方が正解だといえます。植物は「宿根性」と「1~2年生性」植物に大別されます。
「1~2年生性植物」の苔玉は当然ながら1~2年間だけ楽しんで終了となること、致し方ありません。これらの植物の苔玉は、1~2年だけ楽しめば、十分でしょう。”管理次第で3年~5年~10年間は楽しめる”であろう、「宿根性植物」が課題となってまいります。
長期間、苔玉として楽しめる「宿根性植物」には草本性の植物と木本性の植物、端的に言えば「草」と「木」があります。草に該当するモノとして、コクリュウ、タマリュウノヒゲ、フッキソウ等の常緑性苔玉を見かけます。これらは、草丈は余り伸長はしないが草勢強く、苔面を覆いつくして「苔玉」ならぬ「草玉」に成長・変化していき、あまり問題になりません。
紅チガヤ、斑入りのススキ等の落葉性草「苔玉」は、冬期間は苔だけが緑の状況で、「枯淡」の美を楽しまれたらいいと思います。
セローム、オリズルラン、トラデスカンチャー等の観葉植物系の常緑・草・苔玉を楽しまれた方も多いと思います。これら観葉植物系の常緑草は極めて成長が早く、苔玉姿のままを維持することが難しくなります。苔玉根部をばらして、鉢植えとして切り替え楽しむのが得策でしょう。少々大きめの苔玉にしたいと思われる向きには、既存の苔玉根部表面に二重に苔を張り足し、上部と根部のバランスをとって鑑賞するのも一方法です。
シクラメンなどの花物・苔玉は、夏場の管理次第で翌年も開花を楽しめますが、年々老化が進み、徐々に花付きが悪くなってきます。若い今年苗の苔玉を楽しまれるべきでしょう。
クロマツやヤブコウジ、ナンテンなどの和モノ「木」の苔玉は長期間にわたって楽しめます。ケヤキ、モミジ類、雑木類の苔玉には、落葉期冬場の味わいを深めるために、コクリュウ、タマリュウノヒゲ等の常緑性下草を添植します。すっかり馴染んだ和モノ「木」と「苔」は、味わい深いものです。
長期間、苔玉として楽しめる「宿根性植物」の場合、苔部分が茶褐色に痛んだものを、多く見かけます。この場合は、古い苔を剥がして、緑深い新たな苔に張り替えています。緑の「苔」の丘に黒松、真っ赤な南天の葉、万両や藪柑子の赤や白い実の佇まい、年末・年始にわたって、苔玉をお楽しみ下さい。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
もしも Active Note がカフェをオープンしたら…
そんな空想をちょっとだけ形にしてみました。
毎月おすすめの緑と、テーマに合わせたカフェレシピを紹介していきたいと思います。
こんにちは、店員くーこです。
先日、筑波学院大学のコミュニティカレッジで行われた「トルコ式おもてなし講座」に行ってきました。
全4回の講座のうち、3回目だけ都合がついて参加したのですが、この日の内容は「2段式やかんで淹れるトルコのチャイとお菓子作り」でした。先生はトルコ料理研究家のカフラマン菜奈恵先生です。
授業は前半トルコの紅茶の歴史を学びます。
トルコと言えば、ユネスコの無形文化遺産に登録されている「トルココーヒー」が有名ですが、実は紅茶の消費量が世界一でもあるんです。
トルコでは「チャイ」と呼ばれるお茶を、トルコ人は朝から晩まで飲んでいるそうです。日本でチャイといえば、インド式のスパイスと茶葉を牛乳で煮出した甘いものですが、トルコのチャイはストレートティーか角砂糖入りのどちらかです。ミルクもレモンも入れません。アイスティーもつい最近飲むようになったとか。淹れ方も独特で、「チャイダンルック」という、やかんを2個重ねた道具を使います。
簡単に説明すると、
この時に入れる紅茶の量が尋常じゃありません。
おそらく5人前用ぐらいのポットに茶筒半分ぐらいの量を入れます。この日の茶葉は先生オリジナルブレンドでしたが、トルコでは黒海に面したリゼ県で採れるリゼ茶を使うそうです。調べてみると、ブロークンタイプの茶葉でカフェインは通常の紅茶の約半分とのこと。たくさんチャイを飲むトルコの人たちに合っていると言えます。
耐熱グラスで飲むのですが、これまた独特な形をしています。国花であるチューリップを模したものと言われています。このグラスがまた素敵だったんです!ティータイムに美しい茶器は万国共通の様ですね!!
ここで、お楽しみのティータイムの時間がやってきました!
この日はロクムとハンドメイドのハルヴァのパイでした。
トルコのお菓子に対しての私の知識は、シロップべったべたの超絶甘いものでした。しかし、ロクムは日本のゆべしみたいな触感で、中にはピスタチオ、外側にココナッツがまぶさっていて大変おいしかったです。
ハルヴァは日本の落雁に似たものらしく、この日のはゴマが使われていたようでしたが、パイの中に入れるとアーモンドクリームに似ていて、食べやすかったです。この甘さとチャイが良く合います。いくらでもいけます!!
トルコのお菓子の見方が180℃変わりました!
特にロクムは一箱いけるぐらい好みの味でした。これまた通販でしか買えないのが残念です。カルディさんあたりで出してくれないかな?
まだまだ奥の深いトルコのお茶文化ですが、そろそろレシピの時間です。
今回はトルコではおなじみの食材、ブルーポピーシードとヨーグルト、そしてオレンジを使ったケーキを紹介します。ケーキをシロップに漬けるところがトルコ風です。
<レシピ>
◎ 材料(細めのパウンド型1個分1個分)
◎ 作り方
育てやすさ: ★★★
トルコの国花で、原産国でもある。
そのモチーフはトルコタイルや皇帝(スルタン)の衣装などにも見られ、神聖な花として国民に愛されている。
花言葉は 「おもいやり」
つくば市在住。現在子育て真っ最中のフリーライターさん。
学生時代より文芸部の部長を務め、大学では文学部に学び、現在も執筆活動を続けています。
趣味は長年続けているお菓子作り。みんなから頼りにされる緑と料理を愛する主婦です。
コラム「 おうち Moss Café 」は毎月第4土曜日に掲載予定です。
どうして、こんなにわかり切ったことを質問されるのだろうか?と、園芸(苔玉など)をお話しするなかで思うことがしばしばあります。私は一介の園芸のプロ、疑問を抱き質問される方は全くの初心者だから仕方がないのかもしれません。
そうした幾つかの事例をお話ししましょう。
①.「この植物は、花が咲きますか?」
よく受ける質問です。花が咲くということは、植物にとっては子孫を増やすための生殖作用に他なりません。花が咲き、実をつけてこそ、植物の次世代を残す生殖作用です。どんな植物でも必ず「花を咲かせます」。さらに突っ込んで考えてみると、「観賞価値がある花がさくのかな?」という、ご質問だったのかもしれませんネェ!
②.必ず「実を着けますか?」
花がけば雌蕊に花粉(雄蕊)が受粉して、実を着けるのが自然の摂理です。でも私たち人間の都合で、八重咲の花などに品種改良されたものには、実を着けることは殆どありません。雌蕊や雄蕊が、花弁などに品種改良されて「八重咲」になされたことに依ります。大輪八重咲のバラ、八重咲大輪のキク、八重咲のカーネーション、八重咲のツバキ等がいい例です。
③.では、八重咲の美しい花はどんな方法で子孫繁栄させるのでしょう。
挿し木、接ぎ木等の方法に依って子孫を残し、増やします。これらの方法を「栄養繁殖」といいます。これに対して種子を採って繁殖させる方法を「実生繁殖」といいます。
④.「この素敵なバラの花!・・・・・挿木で増やそうかな!」
安易に仰る。それはダメですョ!、今、園芸店に出回っているバラ苗の全ては、接ぎ木された苗です。因みに鑑賞の対象とする植物を、私たち人間の都合で、自然の色、形、香りなど以上に品種改良してしまったモノは、殆どの場合、病虫害への抵抗力などが自然のモノに比べるとひ弱な体質に変化してしまっています。野バラなど、丈夫な野生種を台木として接ぎ木して、病虫害などにも十分耐える「バラの苗木」を作っているのです。モモ、クリ、カキ、ナシ、ブドウ、リンゴなどの果樹の苗も同様の方法で生産されています。
正に「玄人の当然は素人の皆様の驚き!」を、園芸のあらゆる場面で体現し、もっと丁寧な対応をしなければナァ!と、反省すること、枚挙に暇がありません。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。