極めて背が低い植物、余程注意深く目を凝らさないと見落としてしまう「苔」。私たちの生活空間の至る所に苔は密かに生息しています。瑞々しい緑色の苔玉が多くの園芸愛好家に親しまれていること、それは苔の生命力だと思います。
多くの場合、苔玉は室内で観賞されています。苔もその体内に葉緑素を持ち光合成を行なう列記とした植物です。だから、光合成を促すためにある程度の太陽光は絶対に必要な条件です。くれぐれも日当たりに注意してやらなければなりません。苔植物は薄暗い日当たりのない場所に育つものという、固定観念で苔玉を管理しておられる方を多く見かけます。結果として苔面が黒ずんだ状態になり、どうしたらいいのだろう? と、途方に暮れておられる。これ、正に苔が枯れてしまったということです。苔玉として作った当初は美しい緑の苔面、この状態を維持し長持ちさせるには、ある程度の日光が絶対に必要だということを忘れないで下さい。
太陽光に照らせば、苔面は乾燥します。当然のことながら潅水が必要になります。水を遣って、そのまま太陽光線下にさらしたままで放置してはいけません。苔植物を栽培するに当たって最も大切なことは、決して蒸れた状態にしないことなんです。6月以降、夏の強い日射しの中で苔面に散水すると、蒸れた状態になってしまいます。強い日射しの下で水を遣って放置するのは、「蒸れた状態」を作ることになってしまいます。苔には、「蒸れ」は絶対禁物なんです。
苔玉を愛おしみ楽しんでおられるその殆どは、大の園芸愛好家です。ついつい可愛がり過ぎてしまう傾向があります。もっと元気に育てたいとの思いに駆られる心の内は、当然の成り行きでしょう。それではと、肥料を与えたくなる・・・・・とんでもない、肥料を与えてはいけません。何がしかの肥料を与えた結果、殆どの場合、苔は全滅します。じっと目を凝らしてみると、富士山頂から東京銀座の側溝まで、私たちが住む日本列島の至る所に、苔は元気に生息しています。苔たちが元気に自然生息するこれらの場所には、殆ど肥料っ気はありません。
大自然界の苔を観察・楽しむには、梅雨の時期が一番です。たっぷりと体内に水を含み、生き生きとした苔たちが、濃淡様々な緑色で、私たちにその魅力を語り掛けてくれます。緑なす大自然界の苔を楽しみながら学ぶのが、苔玉管理のコツのコツかもしれません。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
もしも Active Note がカフェをオープンしたら…
そんな空想をちょっとだけ形にしてみました。
毎月おすすめの緑と、テーマに合わせたカフェレシピを紹介していきたいと思います。
こんにちは、店員くーこです。
先日、ネット記事で「今年はベトナムサンドウィッチの『バインミー』が熱い!」と見かけました。
なんでも、恵比寿とかおしゃれな街に次々と専門店がオープンして、連日にぎわっているそうです。米粉入りの軽いフランスパンになますを挟むのが特徴的なサンドウィッチで、それに肉や魚、ハーブなどの葉物を入れていきます。野菜をたくさん摂れるので、キラキラ女子に人気が出ているのもうなずけます。
東南アジアでフランスパン?と思うかもしれませんね。ベトナムは19世紀から20世紀半ばまでフランス領地だったので、現在も建物や食事などにフランスだった名残を残しています。「東洋のプチパリ」と呼ばれるホーチミン市にあるサイゴン大聖堂は、パリのノートルダム大聖堂の建築様式を基にしていて、建材もフランスから輸入したものが使われています。メインストリートには高級フレンチレストランやカフェなども点在しています。歴史的建造物を見学しながら、カフェでお茶とか良いですよね。
ベトナムのカフェと言えば、練乳たっぷりのベトナムコーヒーが有名ですが、私の最近のお気に入りは「アーティチョーク茶」です。実は昨年末に尿管結石が見つかったのですが、医者からはたくさん水分を取るようにと言われたものの、緑茶やコーヒーなど酸性の飲み物はあまり良くないらしく、利尿作用があり結石にも良さそうなアーティチョーク茶をカルディで見つけたので常飲しています。味は少し甘くて、草っぽいです。ハーブティーが好きな人はイケると思います。
ポリフェノールや食物繊維が含まれているので、美肌やダイエットの効果もあるみたいです(私はまだ実感できていませんが)。ベトナムの女性が美しいのはこのお茶のおかげとの噂も。この夏は野菜たっぷりのバインミーとデトックスティーで夏バテ知らずですよ!
・フランスパン(バタールなど、ちょっと太めの方が挟みやすいです) 20cmぐらいにカット
・肉(ローストビーフやハムなどお好みで。今回はサラダチキンを入れます) 好きなだけ
・新玉ねぎ 1/4個
・パクチーなどのハーブ類(今回は大葉) 適量
☆大根 8cmぐらい
☆にんじん 小1/2本分
☆塩 小さじ1
☆ミツカン かんたん酢 適量
・バター 適量
・ナンプラー 少々
① ☆でなますを作ります。大根とにんじんは少し太めの千切りにして、塩をまぶして10分置きます。水分を絞って、「ミツカンかんたん酢」に30分以上漬けておきます。かんたん酢がない人は、酢:砂糖=2:1の割合で混ぜて合わせ酢を作ってください。
② 新玉ねぎは薄切りにして5分水にさらし、肉やハーブ類も食べやすく切っておく。
③ パンに切れ目を入れて、バターを塗る。(前日に買ったパンなら、軽くトーストすると美味しい。焼いた後は冷ましておくことを忘れずに。)
④ ①のなますの水気を切って、ナンプラーをあえる。
⑤ 彩り良く上の具をサンドしてできあがり。
育てやすさ: ★★★★
ベトナムの国花。歴史上、ベトナムが苦しい時代があり、それでも蓮のように過酷な環境でも心清らかに、強く美しく生きようという、ベトナムの人々にとって特別な花。首都のハノイでは、6月に蓮の花の見頃を迎える。
花言葉は、「清らかな心」「神聖」
つくば市在住。現在子育て真っ最中のフリーライターさん。
学生時代より文芸部の部長を務め、大学では文学部に学び、現在も執筆活動を続けています。
趣味は長年続けているお菓子作り。みんなから頼りにされる緑と料理を愛する主婦です。
コラム「 おうち Moss Café 」は毎月第4土曜日に掲載予定です。
私たちの毎日の生活は、多くの情報が飛び交う中にあること、先刻ご承知の通りです。これら多くのの情報を処理するために、私たちはパソコンに始まって、多くのIT機器と否応なしに着きあわざるを得ない毎日です。
私のパソコンラックの周辺にも、パソコン本体に始まってキーボード、プリンター、スキャナー、更にCDケースの中にCDやらDVDがいっぱい、各種の印刷用紙、照明器具、また音楽鑑賞のための小型ステレオコンポ、スピーカー等が居座っています。
これらの無機質なIT機器と対峙せざるを得ない毎日に、いつしか疲れを感じることしばしばです。でも、机上の一角にチョコンと遠慮気に座った苔玉にふと眼を奪われ、小さな緑の苔を見つめて、しばし心安らぎ癒されることがよくあります。水をたっぷりと緑の体内に蓄えた瑞々しい苔に、深い生命の息吹を感じるのです。何とも嬉しくなってきます。無機質なIT機器と、一見無関係な感ある生命ある植物の同居に、ほっとするんです。
私たちの生活の多くの部分に、今後ともIT機器は多様に関わってくることでしょう。私たちの体そのものは有機質です、無機質だけのIT等空間に生き続けることは、砂漠をさ迷うようなものでしょう。小さいながらもオアシスを欲しくなること、疑う余地ないことでしょう。無機質なIT機器空間に、細やかな水と緑をもたらす苔玉に感謝です。
また、苔玉は小さな小さな景観の中に四季折々の変化を演じてくれます。今は初夏の新緑、夏は濃緑下に涼をもたらし、秋には果実の充実・紅葉を演じ、晩秋は落葉して枯淡を演じ、翌春には芽吹きの喜びをもたらしてくれ、春爛漫の開花を演じてくれます。
小さいけれど大自然を演じてくれる苔玉に感謝!
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。
もしも Active Note がカフェをオープンしたら…
そんな空想をちょっとだけ形にしてみました。
毎月おすすめの緑と、テーマに合わせたカフェレシピを紹介していきたいと思います。
こんにちは、店員くーこです。
スギ花粉が終わりになり、ようやく春を楽しめるモードになりました。昨年、アゲハ蝶に丸裸にされてしまった我が家のレモンの木が、あっという間に若葉が生い茂り生命の強さを目の当たりにしています。すごいな、春!
今月は「ガーデンシティー」ともよばれるシンガポールを紹介します。
シンガポールと言えば、マーライオンと最近よく目にする超高層ビルに船を載せたような超高級ホテル「マリーナベイサンズ」が有名ですが、実は緑化に力を入れていることでも知られています。街には巨大なレインツリーやヤシの木などが植えられ、その下にはグランドカバーとしてヘリコニアナなどの熱帯植物が植えられています。これらは、観光者の目を楽しませるだけではなく、シンガポールの気温を下げる効果もあるそうです。
観光地が多いシンガポールで、唯一の世界遺産であるシンガポール植物園も訪れたい場所のひとつですね。特に東京ドーム約13個分の敷地内にあるナショナルオーキッドガーデンでは、国花であるバンダ・ミス・ジョアキムをはじめ様々な色・形をした蘭を見ることができます。また、1000種類の生姜を集めたジンジャーガーデンもあります。生姜の花ってカラフルできれいなんですよ。一見の価値ありです!
今回のメニューはジンジャーガーデンにちなんで、生姜の風味が効いた海南チキンライスです。炊き込みご飯とタレの両方にたっぷりの生姜を入れました。鶏肉は茹でる時に沸騰したお湯に同量の水を加えてから入れることで柔らかく仕上がります。お米を炊くときにパクチーの根っこを丸ごと入れると南国感マシマシな風味になりますよ。にんにくは私が苦手なので少な目にしてありますが、お好みで増やしてみてください。
今回のポイントは茹でた鶏肉の皮を取って、フライパンでカリカリに両面焼いて刻んでご飯に混ぜ込んでいるところです。ご飯が香ばしくなってオススメです!
・ 米 1.5合
・ 鶏もも肉 1枚
・ 塩 小さじ1/2
・ 水 4カップ
・ 鶏がらスープの素 小さじ2
・ 日本酒 大さじ1
△ 生姜(みじん切り) 大さじ1
△ ニンニク(みじん切り) 1/2かけ
△ パクチーの根 1株分
△ 塩 少々
【 タレ 】
☆ レモン汁 大さじ2
☆ ナンプラー 大さじ1
☆ しょうゆ 大さじ1
☆ 砂糖 大さじ1
☆ オイスターソース 小さじ1
☆ ごま油 少々
☆ 生姜(みじん切り) 大さじ1
☆ パクチーの茎(みじん切り) 1株分
☆ 唐辛子・にんにく お好みで
【 つけあわせ 】
ミニトマトやキュウリ、パクチーの葉など
① 米は研いで、ざるに上げておく
② もも肉に塩をもみ込んで15分置き、水気を拭き取っておく
③ 鍋に水2カップを沸騰させ、残りの2カップの水・鶏がらスープのもと・日本酒を入れ、皮を下にしてもも肉を入れたら蓋をし、弱火にかけ沸騰したら5分加熱し、火を止めそのまま冷ます
④ 炊飯器に米と目盛りまで冷ました③のスープ、△を入れ炊く
⑤ ☆を合わせてたれを作る
⑥ ③のもも肉の皮を取り、フライパンで両面をカリカリに焼き、きざんでおく
⑦ 炊き上がったら、パクチーの根を取り、⑥を入れて混ぜる
⑧ もも肉をスライスしてご飯とともに盛り付けてできあがり
育てやすさ: ★★★
世界の植物の中で一番種類が多いと言われている。世界中に生息していて、その種類は2万5千種を超える。植物の1割が蘭らしい。
シンガポールでは蘭の輸出に力を入れていて、世界シェアの1/4を占めていると言われている。
日本で蘭といえば胡蝶蘭。蘭は種類によっては贈り物に向かないものもあるが、胡蝶蘭は佇まいや花言葉が良いので贈り物に最適とされている。
胡蝶蘭の花言葉は、「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」
つくば市在住。現在子育て真っ最中のフリーライターさん。
学生時代より文芸部の部長を務め、大学では文学部に学び、現在も執筆活動を続けています。
趣味は長年続けているお菓子作り。みんなから頼りにされる緑と料理を愛する主婦です。
コラム「 おうち Moss Café 」は毎月第4土曜日に掲載予定です。
間もなく八十八夜、青葉、若葉の美しい季節となります。じっと我慢、寒い乾燥期を耐え忍んできた私たちの「苔」も、他の植物たちよりも一足早く新緑の候を迎えています。
「苔玉」の苔は、主に常緑性の植物です。寒い冬ではあっても炭酸同化作用をし、蒸散活動をしており、適度な空中湿度のある環境下で生命活動を営んでいます。しかし、太平洋側の冬は乾燥した寒風吹きすさび、苔にとってはまことに厳しい季節でした。乾燥しきった北西の風は、否応なしに苔・体内の水分を奪い取り、本来緑濃いはずの苔面は惨めにも茶褐色に表面枯死せざるを得ませんでした。でも、苔は極めて丈夫な植物です、適度な空中湿度がもたらされる季節が巡って来れば根本から、あるいは胞子の形で生きながらえて居た苔の子孫たちが、緑の苔を吹き返してくれます。苔の新緑が吹き返して来る生命力に触れると、嬉しくなってきます。
自然界で「苔」景観の美しい場所は、その殆どが日本海側に多く見られます。奥入瀬渓流、奥只見渓流、鳥取大山の渓流域等の苔等々でした。奥日光の渓流、富士山麓の樹海、京都西芳寺(苔寺)の苔等々、太平洋側にも素晴らしい「苔」景観がありますが、これらは全て渓流域等、空中湿度が高い条件下にあります。空中湿度は高いが帯水する場所には、決して素敵な「苔」景観を見ることはありません。
庭先や公園などの身近な私たちの生活環境下でも、注意深く観察すると、素敵な苔の自生を見ることができます。比較的、北~東面の空中湿度を保つことの容易な木陰で、水捌けのよいなだらかな勾配地には、面積の大小にかかわりなく、苔の自生を見ること、しばしばです。
幼い頃、私は昆虫採集、植物採集などを目的として、身近な里山、薪炭林などを、よく歩き回りました。こうした身近な山林・原野にも、以前はもっと多くの苔があったことを思い出します。下草刈などの、山掃除の行われなくなった作今は、残念ながら、以前ほどに苔を見ることがなくなりました。下草類が背高く伸びすぎて、「苔」地面まで太陽光が届かなくなったからだと、思います。
身近な生活環境下、あるいは苔景観の素晴らしい渓流地等々、苔が育つ環境を知ることで、苔玉等の苔園芸を充実していきたいと、考えております。
日本農業園芸造園研究所代表。農業・園芸・造園について30年以上の業務・指導に務める。つくば市在住。
つくばの松見公園をはじめ、数々の有名庭園の設計に携わる。現在は全国各地で苔玉教室などを開催し、誰もが楽しく園芸に触れることができる活動を展開している。
コラム「苔玉に寄せて」は毎月第2土曜日に掲載予定です。